ロシアで日本の「コーヒー」がはやる意外な事情 最大の輸出国であり、全体の3割を占めている

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2020年のロシア向けインスタントコーヒーの輸出量が前年比で118.3%だったUCCホールディングスは、大阪工場で生産したインスタントコーヒーを国内渡しで商社に納品。その後、商社がコンテナ、輸出手配を行い、ロシアに製品が輸出されている。

そんなロシア国内のコーヒー事情について同社の担当者は以下のように説明してくれた。

「ライフスタイルの変化に伴いコーヒー文化が国民生活に定着しつつあることを背景に、おいしいコーヒーに対する需要が高まっています。2010年から2019年までの9年間で生豆輸入量が年平均成長率8.4%と増加で推移しています。

それだけレギュラーコーヒーの需要が高まっているということです。小売市場全体でみると、インスタントコーヒーはレギュラーコーヒーの3倍の規模(金額)となっています。過去6年間の年平均成長率ではインスタントの7.48%に対し、レギュラーが13.3%と好調です」

世界各地の最新情報を網羅したトリップアドバイザーを見ると、モスクワのカフェ・ 喫茶店は1629軒と記載されている。スタバもあれば地元の独立系カフェもあり、若い世代を中心に人気となっている。

コロナ禍でインスタントコーヒーが人気に

現地では、ロボット店員が1杯60ルーブル(約80円)のコーヒーを販売する屋台のようなカフェの登場も話題になった。そんなモスクワをはじめとするロシア国内のカフェ文化の広がりに立ちはだかったのがコロナ禍だった。

ロシアでも飲食店の営業停止、外出自粛などの措置が取られたことで、内食志向が高まり、それがインスタントコーヒーの需要増につながったとみられている。

生産地・ブラジルやベトナムなどから輸入されたコーヒー生豆を、日本で焙煎して数種類をブレンドし、グラインド(機械で挽く)してから、コーヒーを抽出。それをフリーズドライ製法(真空凍結乾燥法)やスプレードライ製法(噴霧乾燥法)でコーヒー粉(粒)にする。そんな工程を経て出来上がったインスタントコーヒーが、船でロシアや中国、アメリカなどに輸出され、家庭や職場の食卓で飲まれているのだ。

コーヒーを味わうとき、どんな思いでカップを口にしているのだろうか。1杯のインスタントコーヒーには時間と空間を超えたドラマがある。

それはコーヒーだけの話ではない。輸出入統計の数字の向こう側には、生産物にかかわる多彩な人々の姿があり、さまざまなドラマが展開されている。読者が日常口にする食べ物や飲み物にも、想像を超えるドラマがきっとあるはずだ。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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