ロシアで日本の「コーヒー」がはやる意外な事情 最大の輸出国であり、全体の3割を占めている

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しかし、インスタントコーヒーの輸出量、輸出額の伸びは目を見張るものがある。輸出量は前年に比べ3.06倍。輸出額も2.64倍と激増しているのだ。

このインスタントコーヒーの輸出に注目したのが名古屋税関だ。名古屋税関は2020年11月にホームページに『名古屋税関管内の輸出品から インスタントコーヒー』という特集記事を掲載した。

そのなかで同年上半期の実績について<全国・管内どちらにおいても数量・金額ともに、2010年以降半期として最高値となっており、すでに昨年の年間の輸出実績を超えています>と紹介している。さらに詳しく見ると、3月からの伸びが著しく、6月にピークを迎えたとある。

ちなみに2020年通期の名古屋税関管内からの輸出量は4087トンで全国6170トンの66.2%を占めている。輸出額は54億3500万円で全国の58.9%となっている。名古屋税関管内および全国で見ても、大手のインスタントコーヒー工場に近い清水港からの輸出が圧倒的に多い。輸出量では6割が清水港だ。

インスタントコーヒー輸出増加の背景についてはどう分析しているのだろうか。名古屋税関の担当者に尋ねたところ、特集記事に記載したことがすべてとの回答だった。

<輸出者によると>とした記載内容はこうだ。

<新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請や移動制限の影響を受け、世界における需要と供給のバランスを保つため、日本からは特にロシア、アメリカ向けの輸出が増加していること>

<家庭内における需要の増加が、家庭外での需要減少を上回り、世界的に需要が増加していること>

<中国において、カフェ等の進出により、若い世代へのコーヒーへの認知度が高まっていること>

やはりコロナ禍の影響を色濃く反映した結果のようであるが、ロシア、中国というこれまでコーヒー文化になじみが薄い国への輸出が上位に来ている点が興味深い。

コーヒー文化が急速に普及するロシア

インスタントコーヒーの最大の輸出国はロシアで、金額ベースでは全体の31.7%を占めている。ロシアといえば、サモワールと呼ばれる湯沸かし器で入れた紅茶文化の国というイメージが強い。

ところが、いつの間にかロシアは世界でもそこそこのコーヒー大好き国になっていた。アメリカ農務省の資料(2020/2021)をみると世界のコーヒー国別消費量は以下の通り。

①EU 28% ②アメリカ 16% ③ブラジル 14% ④日本 5% ⑤フィリピン 4% ⑥カナダ 3% ⑦ロシア 3% ⑧インドネシア 3%

コーヒー生産国のコロンビアやベトナムよりも消費量が多いというから意外だ。ロシア国内の2019年のコーヒー消費量は18万トンに達し、紅茶の14万トンを初めて上回ったという報道もある。

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