「度重なる転職」に理解を示さない妻の深層心理 キャリア形成に「一発逆転」はありえるのか

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しかしながら何も軸がなく、何となく世の中のトレンドや流行に乗っかり、ランダムに志のない転職を繰り返すのは、キャリア上マイナスでしかありません。

一貫した経験やスキルの積み重ねが限定的になる、という視点でもマイナスですし、何よりもそのような行動は社会人として持つべき責任感やしっかりとしたキャリア観の欠如という意味においてもマイナスです。

次郎さんは、「思い立ったら吉日とばかりに転職」をしてきたとのことですが、本来転職は慎重に行うべきものであり、長期的な目線に基づいて戦略的に行うべきものです。転職を通じて自分は何を成し遂げたいのか、そしてその転職は将来の自分のキャリア上の選択肢を増やすような結果をもたらす可能性が高いのかなどなど、考えるべきことは非常に多いのが転職です。

ですから、思い付きの行動はもちろん避けるべきですし、一発逆転を狙ってするような代物でもないのです。

行動の背景にある「思考」

もしかしたら、奥様が反対されるのも、そのような今までの次郎さんの転職の背景に一貫したキャリア観や考え、つまり軸がないがゆえの心配であり不安なのかもしれません。

もちろん行動力自体は評価されてしかるべきですし、次郎さんの前向きな姿勢も評価されてしかるべきだとは思います。

しかしながら、大切なことは行動の背景にある思考であり軸です。

過去の行動にも一貫したポリシーなどの軸があり、その志なりに奥様が納得されていれば応援してくれるでしょうが、そういった志や考えを共有してこなかった、または説明できていないというケースでは反対されてしまって当然なのかもしれません。

もっというと、そもそも論としてそういった軸が不在であることを奥様に見抜かれてしまっており、その思考なき行動が不安を与えてしまっているのかもしれません。

であればまずやるべきことは、ご自身のキャリア観の整理であり、軸の構築であり、説明です。そのうえで、その軸にのっとった行動を心がけるようにしましょう。

キャリアとは日々の経験なりの積み重ねであると冒頭申し上げましたが、人間関係における信頼感の構築も日々の積み重ねです。ここにも一発逆転はありえないのです。

次郎さんは行動力や前向きな姿勢はお持ちですが、長期的な視点や軸といった深い思考が加われば、より大きな結果につながるのではないかと思いますし、奥様の応援も得られるのだと思います。

これを機に、短期的な視点でのキャリア上の行動を捨てて、より長期的な視点に立った行動を心がけてみてはいかがでしょうか。

次郎さんがそのような行動の変化を通じて、より一層キャリア上の発展を遂げられ、また奥様の信用を取り戻すきっかけをつかむであろうことを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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