谷原章介「どんな役も演じ分ける技工派」の魅力 「アタック25」に隠れた俳優としての圧倒的才能

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『鬼平犯科帳THE FINAL 前編 五年目の客』(2016年・フジ)では盗賊の一味で、女好きの音吉役。5年前、年増女郎の若村麻由美に金を持ち逃げされた過去があるが、すっかり忘れちゃってるのんきさ。その女好きとのんきさでうっかり殺されるわけだが、隙だらけで不完全な谷原も悪くない。

『犯罪症候群Season2』(2017年、WOWOW×東海テレビ)では主人公の刑事役。恋人を殺されたが犯人は未成年という過去を背負う(とにかく谷原は恋人や妻と死別する役が多い)。谷原が抱える苦悩、矛盾する正義と倫理観の行方、スリリングな展開と衝撃の最期。じゃないほうの谷原で最も重厚な役だったと思う。

また、『偽装不倫』(2019年・日テレ)では、妻の不倫に悶々と悩むも不気味なくらい冷静に受けとめようとする夫の役。このときの表情には「ダークサイド谷原」降臨。

そして、密かに代表作と思うのが『腐女子、うっかりゲイに告る。』(2019年・NHK)で演じたゲイの既婚者役だ。妻子には伝えず、密かに男子高校生と肉体関係をもつ。自分を「鳥でも獣でもない卑怯なコウモリ」と自嘲するも、隠して生きる覚悟を穏やかに語る姿には胸を打たれた。そういう生き方もある、と。

「モナリザ」スマイル

というわけで、感情や人生の陰影を担う俳優として暗躍してほしかったが、しばらくは司会業に専念するのだろう。では、朝の顔として谷原に何を期待するか。

ずっと思っていたのだが、谷原の笑顔はレオナルド・ダ・ヴィンチの名画「モナリザ」に似ている。隙のない微笑みはちょっと怖い。一見、柔和で親しみやすさがあるけれど、一枚皮をめくると殺伐とした無表情が出てきそうな。

朝だからといって爽やか一辺倒でなくてもいい。全方位外交の微笑みをかましつつ、何か含みがほしい。口角は上がっているが目の奥は笑わないとか。美しい声でエエこと言っているようだが、よくよく聞いてみると極上の毒または凡庸な雑味で肩透かしとか。この春、谷原の笑顔を勝手に解釈して密かに楽しむ予定。「きょうのワンコ」ならぬ「きょうのショウスケ」。SNSで盛り上がったら面白いよね。

吉田 潮 コラムニスト・イラストレーター

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よしだ うしお / Ushio Yoshida

1972年生まれ。おひつじ座のB型。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News it!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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