谷原章介「どんな役も演じ分ける技工派」の魅力 「アタック25」に隠れた俳優としての圧倒的才能
そういえば、谷原の主演映画は女子高生にかっさらわれる傾向が。『極道戦国志 不動』(1996年)では、九州ヤクザの息子が全国制覇を目論む話で、谷原は背中に赤い不動王の入れ墨を入れた頭脳明晰な高校生役。兄を殺めた父を憎悪する葛藤が描かれたが、シリーズ化すると露出の多い武闘派女子高生や女教師に主軸が移り、結果的には「思春期男子のおばんざい映画」になってしまった感がある。
また、『天使の恋』(2009年)は援助交際元締めの女子高生と恋に落ちる脳腫瘍患者という役だが、女子高生役の一本調子の破壊力が凄すぎて。昔のカドカワ映画はこんな感じだったわとしみじみ。おっと、話をショウスケに戻そう。
アイコニックなショウスケ
異論があるだろうけれど、出世作はおそらく映画『ハンサム★スーツ』(2008年)だ。小太りで不細工な定食屋店主(塚地武雅)が特殊なスーツを着るとあら不思議、見た目が谷原になるというコメディ。
ただ、あくまで中身は塚地。谷原は股を開いてドタドタ走り、アホ面でオヤジギャグを連発。塚地を形態模写する谷原はキレッキレ。何か大切なモノを失ったような、でも本人めっちゃ楽しんでいるような。光山杏仁という役ではなく、塚地武雅を完璧に体現した達成感が伝わった。
演技で魅せる谷原はもちろんだが、造形と絵ヅラだけで魅せるアイコニックな谷原にも一定のニーズがあったことを記しておく。私が鮮明に覚えているのは3作。
映画『嫌われ松子の一生』(2006年)では、主人公・松子(中谷美紀)が勤めていた中学校の同僚教師役だ。白いジャージスラックスを穿き、股上を深く持ち上げながら、白い歯をキラリンと見せるだけ。松子の初恋の相手なのだが、情も誠意もない。ただただ白くまぶしく光る谷原の、妙にアイコニックな姿が忘れられない。
また、『ザ・マジックアワー』(2008年)では、劇中劇の人物を演じた谷原。主人公の佐藤浩市が大好きな昔の映画俳優・高瀬允役。劇中映画「暗黒街の用心棒」の主役ニコを演じた後は消えてしまった一発屋俳優という設定。モノクロのスクリーンの中にしか登場しないのだが、「いかにも昔の映画に出てきそうな二枚目俳優」として目に焼き付く。昔の言葉でいえば「バタ臭い」。アンティークな二枚目といえば、確かに谷原の右に出るものはいない。
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