災害大国ニッポンの「高速道路」次への備えは この冬、相次ぐ災害に見舞われた教訓とは

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またこうしたときは、駅員に状況を聞いてみても「高速バスは走ってますよ」ぐらいの情報しか得られず、バスの行き先や時間まで事細かに教えてもらうことは期待できない。災害時の移動に必要な情報の提供と受け取りについては、まだまだ検討の余地があると考える。

鉄道の駅で代替手段の情報はなかなか得られない(写真:kawamura_lucy / PIXTA)

大雪の心配も減り、地震の影響も収まった矢先、今度は栃木県足利市などで広がった大規模な山林火災によって、北関東道が通行止めになり、ほぼ丸5日間、クルマが走れないという事態が発生した。

乾燥地帯が多いアメリカやオーストラリアなどでは、近年でも何週間も続く山林火災は珍しくないが、日本でもこうした火災が広がって高速道路に大きな影響を与えるとは、あまり予想されていなかったであろう。

しかし、考えてみれば、ひとたび市街地を離れると日本の高速道路の多くは平野であっても山裾に沿って道路が続く場合が多いし、山間部の道路ではどこで山火事が起きてもおかしくない。

こんなときはもちろん、火事が収まって安全が確認されるまで通行止めにしておく以外に対処のしようがないが、今回も通行止めによって周辺の幹線道路が混雑し、市民生活に影響が出たことを考えると、高速道路が通行止めになった場合に、どんな迂回路の情報を利用者に提供するのかは重要であると考えられる。

災害対策の重要性をかみしめて…

3月は、例年であれば多くの新規路線が開通し、高速道路ファンにとってはまた新たな路線が走れるという期待に華やぐ季節である。今年も宮古盛岡横断道路の全通をはじめ、三陸縦貫道のいくつかの区間や四国の高知・徳島などで、短距離ながら新たな路線の開通が予定されている。

路線の延伸を歓迎する一方で、災害時の安全の確保や通行止めとなった場合の代替手段の提供といった、生活に直結した基本的な施策の重要性をあらためてかみしめて春を迎えたい。同じような事態を二度と引き起こさないようにするためにも……。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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