日銀の黒田総裁、残る2年でレガシーを残せるか 3月の「金融緩和の点検」を前に金融政策を読む

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2016年9月、イールドカーブ・コントロールなどを導入した政策決定会合後、記者会見に臨む日本銀行の黒田東彦総裁(撮影:今井康一)

日本銀行は3月19日、「金融緩和の点検」の結果を公表する。

点検を行うことを予告したのは2020年12月18日の政策決定会合時だった。金融政策を点検するのは日銀にとっては通常の業務とも思えるが、3カ月後に結果を発表すると予告したことで、「どんな政策変更があるのか」と市場の臆測を呼ぶことになった。

マイナス金利政策を変えるつもりはない

黒田東彦氏が2013年3月に総裁に就任してから8年が経過しようとしている。2023年4月8日の任期満了まであと2年。このタイミングで、日銀はいったい何をやろうとしているのか。

点検の狙いについて日銀は、「2%の物価安定目標を実現するための、より効果的で、持続的な金融緩和を実施していくため」としている。ただし、現行の金融政策の枠組みは変更しないという。

マイナス金利政策や2%の物価目標についても「変えるつもりはまったくない」(黒田氏)。そのうえで金利操作や資産買い入れの手法などを点検し、「さらなる工夫があれば実施する」(同)のだという。

日銀が「点検」を決めた背景について、識者はどうみるのか。日銀で調査統計局長や金融市場局長を歴任し、2018年3月から2020年5月まで金融政策担当の理事を務めていた、ちばぎん総合研究所の前田栄治社長は「いちばん重要なポイントは、物価がなかなか上がらないこと」と指摘する。

2020年春のコロナショックによって物価(生鮮食品を除く消費者物価指数)は再びマイナス圏に沈んでいる。だが、コロナ禍の前から2%の物価目標達成は困難というのが日銀の基本認識だった。

そのため、大規模な金融緩和は今後も長く続ける必要があるが、異例の緩和策は重大な副作用を伴う。国債や上場投資信託(ETF)などの買い入れは、価格形成のゆがみや流動性の欠如など、健全な市場機能の形成に悪影響を及ぼしている。

東洋経済プラスの連載「黒田日銀『苦闘』の最終章」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。連載では黒田日銀下の金融政策の課題を取り上げています。
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中村 稔 東洋経済 編集委員
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