アメリカの経済成長率は10%接近の可能性 <金利・株価乱調>NYの専門家に聞く

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2013年5月のバーナンキショックによるテーパータントラム(当時のバーナンキFRB議長のテーパリング示唆発言による市場の混乱)のように、FRB内部でコンセンサスができていないとか、市場とのコミュニケーションがうまくいかないと株価急落など市場の混乱を招きかねない。今年後半にかけて注意すべきだ。

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それでもアメリカは経済が強いので、株価が一時的に調整しても戻る力はある。調整後に再び高値を目指す展開だろう。ウォール街では主要株価指数のS&P500が企業収益の拡大に伴って来年には1.5倍になるという強気論も結構多い。

問題は、ワクチン普及の遅い国や、景気の回復度合いから見て株価水準が高い国のリスクが大きいことだ。新興国を含め、市場における負の影響の伝播が懸念される。

日本についても景気の戻りが悪い割に株価が高いという意味で、影響拡大に警戒すべきだ。バーナンキショックのときも一時的に円高、株安が進んだ。当時は安倍首相の「バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは買いだ)」発言と東京五輪決定で回復したが、今年はそうした材料がない。そこが怖いところだ。

「空箱」のSPACは規制強化の方向

――アメリカではジャンク債の発行急増やSPAC(特別買収目的会社)の乱立などバブル的兆候も指摘されています。

SPACに関しては、今後規制が強化される方向と見ている。投資家保護がポイントになって、特に情報開示が厳しくなりそうだ。SPACはいわば「裏口上場のための空箱」のようなもので、どういう買収計画があるのか、その道筋やリスクをしっかり開示することが重要だ。

SPACの投資家にはヘッジファンドが多く、彼らが高値で売り抜けて大儲けしている反面、個人を含めて損をしている投資家も多い。上場1年以内に3分の1以上が下落しているとも言われ、金融規制に厳しい民主党政権の対応が予想される。次期SEC(証券取引委員会)委員長のゲンスラー氏はオバマ政権下で金融規制のドッド=フランク法、ボルカールール制定の中心的存在だっただけに、SPACにも厳しい姿勢で臨むだろう。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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