成功した人が「見る前に跳べ」と本気で語る理由 想像を超えるアイデアのつくり方
これを考案したのは、イアン・J・グッドフェローという若き天才だった。グッドフェローは仲間と一緒に夕食をとりながら話をしているうちに、このアイデアをひらめいたという。そして食事を終えると、すぐに思いついたばかりのアイデアを試してみた。まさに、見る前に跳んだわけだ。
そこでなかなかいい結果が出たので、グッドフェローはその翌日にすぐ論文を書いて発表した。
もちろん、翌日に書いた最初の論文はまだ不十分なものだ。そこで完璧にシステムが完成したわけではない。敵対的生成ネットワークが機能することは証明されたが、欠陥もあった。でも、こういうインパクトのある論文は研究者コミュニティーの中で一気にバズる(拡散する)ので、皆がいろいろな実験を始める。それによって問題点が次々と解決され、GANはあっという間に使えるネットワークとして普及していった。
この話だけ聞くと、「やっぱり天才にはかなわない」と思う人もいるだろう。しかし想像するに、いくら天才とはいえ、グッドフェローがいつもこのやり方で成功を収めているはずはない。同じように何かを思いつき、速攻で実験してみたものの、完全に空振りに終わったという経験をきっと何度もしていることだろう。そうやって何度も打席に立っているから、GANのようなホームラン級の成功が飛び出すのだと思う。
「思いついたらとにかく手を動かす」のは、アイデアを形にするうえでそれぐらい大きな比重を占めていると私は思う。
試行錯誤は神との対話
試行錯誤は、はたから見れば地道な作業だろう。でも、地道に手を動かすことによって、さらに別の妄想が湧いてくることもある。
だから私は、何度も失敗を重ねながら手を動かす時間は「神様との対話」をしているのだと思っている。天使のようなひらめきは、腕を組んで考え込んでいてもやってこない。手を動かしながら、神様に向かって「こうですか? これじゃダメですか? やっぱり違います?」などと問いかけ続けると、いつか神様が「正解はこれじゃ」とひらめきを与えてくれる。そんなイメージだ。
そういうひらめきを得ながら、試行錯誤を重ねてゴールまで到達する経験を一度でもすると、自信が持てるようになる。そういう成功体験がなく、失敗に嫌気がさして途中で投げ出してしまうことが何度かあると、逆に自信を失ってしまう。そういう好循環を起こすには、とにかく一度は放り出さずに最後までやり切る経験をしたほうがいい。
それがどうしてもできないとしたら、自分の取り組んでいることが本当に「やりたいこと」なのかどうかを再点検してみる。
人からやらされることはそんなに長く続けられない。「こんなの自分には難しい」と思ったら、放り出したくもなるだろう。学校の勉強と同じだ。
でも、自然に手が動いてしまうような、好きでやっていることは、いつまでも続けられる。人から「もうやめなさい」と言われてもやめたくない。自分の「やりたいこと」が見つからないという人は、今の自分が何に手を動かしているかを考えてみるといいかもしれない。
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