プリウス/アクアの販売が4年で6割も落ちた訳 ハイブリッドの代表としての役目は終わったか

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それが2020年5月以降は、すべてのトヨタ車を全店で買えるようになったから、アクアとプリウスは、販売系列を拡張したヤリスやカローラツーリングなどに顧客を奪われ、さらに登録台数を減らす結果となったのだ。

この流れを振り返ると、今ではアクアとプリウスの存在価値が大きく下がったように思えるが、実際はどうなのか。販売店に改めて尋ねると、以下のように返答された。

「たしかに、発売年から考えればアクアは古くなりましたが、重心が低くてボディも軽いために感じられるスポーティーな運転感覚は、今もアクアの強みのひとつです。買うかどうかを迷っているお客様に試乗していただくと、運転感覚のよさから契約されることも多くあります。このアクアの特徴は、ヤリスハイブリッドではえられないでしょう。プリウスは、認知度の高さで今もハイブリッドのナンバーワンですから、このまま終わらせるには惜しいクルマです」

ハイブリッドの代表選手として

冒頭で述べたとおり、プリウスとアクアの認知度は今でも高い。それなら今後もハイブリッド専用車として、イメージリーダーの方向に発展させるやり方があるだろう。

たとえば、ヤリスハイブリッド「X」グレードのWLTCモード燃費は、日本車では最高峰の36km/Lだが、それなら次期アクアはさらなる軽量化と空力特性の向上によって40km/Lを達成させる。

現行「プリウス」のハイブリッドパワートレイン(写真:トヨタ自動車)

空力特性の優れた5ドアクーペ風の外観とすれば、カッコもよく先進性も感じられるデザインとなる。そうなれば、ヤリスハイブリッドとは異なる、低燃費車の象徴的な価値を与えられるはずだ。

プリウスは、最先端のハイブリッドシステムを搭載して、環境性能の優れたトヨタ車の代表的な存在に位置付けたい。

1955年に初代モデルを発売した「クラウン」が、20世紀のトヨタを代表する存在だとすれば、1997年に初代が登場したプリウスは、21世紀のトヨタを牽引するクルマになっているといえる。プリウス、アクアとも、今後も低燃費車の代表として進化を重ねてほしい。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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