育休中の「住宅ローン審査」が不利になるワケ 申し込む金融機関の対応を調べて交渉する必要

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2人で住宅ローンを組むことを重視する理由として、住宅ローン控除を挙げるご夫婦が多いです。せっかく共働きなので、夫婦2人で住宅ローンを組むことで、フラット35などの収入合算(連帯債務)やペアローンであれば、夫婦2人分の住宅ローン控除を受けられてお得になるからです。特に今は、本来10年間だった住宅ローン控除期間が13年に延長されているため、魅力的でもあります。

ただ、よく考えてみると、住宅ローン控除は、①年末時点の住宅ローン残高の1%、②所定の上限額(高性能住宅5000万円、一般住宅4000万円、中古住宅2000万円など)の1%、③支払った所得税(控除しきれなかった場合は、翌年の住民税からも控除)のいずれか少ない額になります。

住宅ローン控除について「10年間で最大400万円」といった表現で語られるのは②にもとづく数字ですが、産休・育休中の年収が少ない場合には③にもとづく額が採用されて、思ったほどには住宅ローン控除の恩恵を受けられない可能性があります。休職時の収入とローンの組み方を工夫することも視野に入れておきたいところです。

家も子どもも両立させることは簡単ではない

以上、産休・育休中における住宅ローンに焦点を充てて見てきました。無事に住宅購入できた後のことについて軽く触れておくと、「家」も「子ども」も「仕事」もすべてを両立させることは、承知のうえではあるものの決して簡単なことではありません。

長く休んだ分だけ復職後はしっかり「仕事」をがんばろうと思う一方で、「子ども」に集中できていた育休中からの反動は想像以上に大きいものです。

出産前と異なり「仕事」だけに集中できない暮らしとなるため、心身共に行き詰まって、最終的に「仕事」を辞める選択を検討する人もいます。これまで、そんなご家庭の家計見直しなどのお手伝いもしてきました。

助けてもえらえる支援には遠慮なく甘え、手抜きできるところは抜き、時として完璧主義は棚上げすることも大事です。妻の精神的・身体的負担が大きくなりがちのため、夫婦間での思いやりと助け合いは大事です。どうか「夢」のマイホーム取得が、悪夢にならぬよう、購入する物件(物件価格や保育園と通勤を考慮した立地)やタイミングについて慎重に検討していただけたらと思います。

竹下 さくら ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

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たけした さくら / Sakura Takeshita

兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学商学部にて保険学を専攻。損害保険会社の営業推進部および火災新種業務部、生命保険会社の引受診査部門の勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。個人向けコンサルティングを主軸に講演・執筆を行う。『「奨学金」を借りる前にゼッタイ読んでおく本』(青春出版社)、『「家を買おうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)など著書も多数。

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