地方テレビ局が直面する「窮状」と新たな挑戦 宮城民放4局が「ネットサイマル」で得たもの

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東北の名産品をお得にお取り寄せできる(写真:LivePark)

テレビ業界というと華やかなイメージを持つ読者もいるかもしれないが、ローカル局の現状は決して楽なものではない。その背景には都道府県単位の放送免許(=ローカル企業の広告に頼らざるをえない)こともあるが、それでもメディアとしてテレビの力が圧倒的だった頃は成立していた。

しかし近年、若年層のテレビ離れやコロナ禍における映像配信サービスへのシフトなどが進む中、ローカル局は生き残りの手段を自ら模索しなければならない環境に置かれている。

そうした中で、「自ら積極的に変化」を求めて企画したのがLIVE MIYAGIだった。

放送と同時にネットでも配信する「ネットサイマル放送」の解禁という機会に、新しいビジネスモデル構築を模索しようというわけだ。

「ネット配信限定CM枠」で地方から全国へ

ネットサイマルで配信されることで、ローカル局の番組を営業地域外でも視聴可能になるが、発信している内容はあくまでも地元向けの内容だ。

「‟ローカル局”といっても放送局として免許を受けている以上、地元情報を発信し続ける責務があります。東日本大震災では被災地の情報を流し続けましたし、震災から10年が経過した現在でも、行方不明者の情報などを伝え続けています。テレビ局は放送免許で守られている一方、そうした責任を果たせねばなりません」(阿部氏)

番組を見ながらコメントも書き込める(写真:LivePark)

しかし一方で前述したように、余暇を過ごすための時間が割り振られる先は多様化しており、CM収入だけではローカル局を維持していく限界も見えているという。

テレビCM枠は不動産にも例えられ、その枠が欲しい企業が多ければ枠の価値は高まる。しかしCM枠が余り始めるとローカル局同士での価格競争が始まる。そこに参戦するとインフラ投資事業でもある放送局のビジネスモデルは、一気に揺らぎ始める。

安売りを始めるライバル局が出始める中で、ビジネスの根幹を守るために価格引き下げに応じなければCM枠は売れず、自局番組のCM(自社広告)を増やさざるをえなくなる。

無論、ローカル局も営業努力を怠っているわけではない。

以前から行われてきた繁華街や局内でのイベントへの集客など放送外収入を増やそうとはしているものの、そこには限界もある。

そこで企画されたのが、地元企業が自治体の外に住んでいる出身者に向けたCM、それも実際の商品購買につながるような割引クーポンのオンライン発行、実際に購入してお取り寄せできるところまでの動線を引くというアイデアだった。

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