STAP騒動…日本の科学はダメなのか? 田原総一朗×丸幸弘「日本の科学と教育を変えよ」
STAP問題が明らかにした課題
丸:ところで、科学の怪しい面が、悪い意味でクローズアップされているのが、最近のSTAP騒動だと思いますが、田原さんはどう見ておられますか。
田原:小保方さんは「情熱」はすごくあったと思う。僕は実験や論文にエラーとか粗雑さはあったけど、捏造まではなかったんじゃないかと見てます。仮説と実験結果はそんなにぴったり整合するものじゃない。捏造というのは理研がそういうふうに見立てたいということなんじゃないかな。再調査しないということだし。
丸:僕たち科学者の間でも理研はナンバーワンの組織です。いい面からお話しすると、30代の研究者に1000万円クラスの報酬を与えられる仕組みを備えている。たとえれば大リーグみたいなイメージです。
田原:実際、彼女もそのくらいもらっていたようだね。
丸:僕はこれはすばらしい仕組みで、若い研究者たちがそこを目指して頑張っているんです。だから理研を解体するみたいな話になっては困ります(笑)。小保方さんもそこに至るまではいくつものハードルをクリアしていると思いますから、能力は高いはずなんです。きちんとした研究成果も挙げているはず。
ただ、彼女は会見で「STAP細胞はあります」と断言してしまった。そう信じるのは個人の自由ですが、それは科学者の姿勢ではない。宗教の領域になってしまいますから、これはよくなかったと思います。会見では「再実験して、事象を再現する機会を与えてください」と言うべきだった。
理研も「けしからん」という姿勢ではなくて、「そもそも科学において、仮説と実験結果は異なるものです。結果が出るまで見守っていてください」というメッセージを発してくれていれば、ここまで問題は大きくならなかったはずです。
当事者ではありませんので、背景にどんな事情があったのかはわかりません。ただ僕は、若い研究者のチャンスが、これがきっかけで排除されてしまっては嫌ですし、僕の知人・友人もたくさんいる理研の研究者の肩身が狭くなったり、再調査のために直接関係のない彼らの研究がストップしてしまうことも望ましいことではないと考えています。
田原:科学教育を手掛ける立場から、小保方さんのノートなど研究手法が粗雑だったという指摘についてはどう考えますか?
丸:たとえば米国の場合、大学の1年目に「研究者とはなにか? 研究とはなにか? 論文の書き方とは?」といった基礎的な素養を学ぶクラスが必修科目として用意されています。ところがこれも日本にはない。
田原:日本には「What」がなくて「How to」しかない。