楽天、携帯の今後占う「カネ集め」に込める渾身 事業撤退に米リフト株活用とあの手この手

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利用データ量の少ないユーザーから得られる月額料は従来より減るが、その分ユーザー数の拡大で補う。今後は4Gに加え5Gの通信環境整備も進めるが、「(携帯事業の)2023年黒字化という計画に変更はない」(三木谷氏)。

楽天が携帯事業でのユーザー開拓をこれほど重視するのは、収益基盤であるEC事業、金融事業などへの波及効果が見込めるからだ。

楽天ポイントでほかのサービスへ誘導

例えば、楽天モバイルに加入した楽天市場ユーザーは、1人当たりの平均月間購入額が加入以前の期間に比べ4割以上増加している。同期間、非加入者の平均購入額も1割強増加しており、全体にコロナ禍の巣ごもり需要による押し上げ効果があったのは事実だ。一方で、携帯事業で囲い込んだユーザーを独自のポイントプログラム「楽天ポイント」等のメリットを通じ、ほかのサービスへと誘導する流れができつつあるのも確かだ。

20年の通期決算において、楽天市場、楽天トラベルなどを含む国内EC事業は約580億円、楽天カード、楽天銀行などを含む金融事業は約810億円の営業利益を稼ぎ出した。携帯事業を通じて新しいユーザーを取り込めれば、こういった収益基盤もさらに強固にできる。

とはいえ、前期はこれら事業の収益を携帯事業への先行費用であっさり食い潰した。21年は基地局の稼働数が増え償却負担はさらに増す。楽天はこれに備え資金の投下先を絞るべく、海外を中心に事業の撤退、見直しも進めている。

20年中には米国とドイツのマーケットプレイス事業を相次ぎ終了。いずれも10年以上の歴史を持つ事業だった。加えて、投資先である米国のライドシェアサービス・リフトの株式を活用したアセットファイナンスを実施し、有利子負債を増やすことなく7億ドル超を調達した。

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