今から日本に「天才起業家」ひしめく時代が来る 藤野英人「起業界の藤井聡太や大谷翔平が続出」

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――江副さんがリクルートの経営に関わっていたのは、今から30年以上前の1989年までです。多くの人が江副さん自らによって手取り足取り育ててもらったわけではありません。

人材を育んでいるのは、江副さんが残した空気。リクルートの文化ですね。日本の多くの大企業がもつ旧態依然としてシステムとは無縁で、東大卒のエリートと地方の高卒男子や女子をフラットに起用して競わせるとか、垂れ幕文化とか、お祭り的な雰囲気とか、圧倒的な1番になるために挑戦する風土とか。起業家に必要な気質が身につく環境があるんです。

やっと「ベンチャーが大きく育つ環境」が整った

――元リクがそれだけ目立つということは、裏を返せば他の場所で起業家が育っていないということになります。実際、日本で生まれるベンチャーの数はアメリカ、中国などに比べると少ないし、世界に通用するベンチャーもあまり生まれていません。

レオス・キャピタルワークス代表取締役社長兼CIO(最高投資責任者) 1966年富山県生まれ。1990年早稲田大学法学部卒業。野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)、ジャーン・フレミング投信・投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)などを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業、CIOに就任。中小型・成長株の運用経験が長く、25年で延べ5500社、6000人以上の社長に取材。ファンドマネジャーとして豊富なキャリアを持つ。2009年取締役就任後、2015年10月より現職(撮影:今井 康一)

日本でベンチャーを育てようという機運が高まったのは、マザーズが誕生した2000年。当時、ブームに乗って登場した起業家は、けっして行儀のよいエリートではなく、今の言葉で言えば法令順守とかリスクを理解しない人も多かった。ビットバレーの失敗もあります。お調子者が集まって、粉飾決算などをやらかして消えていった。

そこを生き延びたのが、元リクのベンチャーであり、楽天、サイバーエージェントです。あれから20年経って、日本のベンチャー市場は今ようやくスタートラインに立った気がします。

ベンチャーが育つには市場というハードのインフラだけではダメで、ベンチャーを育てるソフトウェアが要ります。この20年、ベンチャー・キャピタル(VC)、弁護士、会計士、金融庁、経産省などさまざまな場所でみんなが試行錯誤を繰り返して、ようやくそのソフトウェアが整った。このインフラから若くて優秀な起業家が羽ばたこうとしています。

――これまで起業のインフラ作りに尽力してきた藤野さんにとっては、こたえられない瞬間ですね。

今、すごくワクワクしています。2000年頃のアメリカでは、最優秀の若者たちがGAFAのようなベンチャーをどんどん興していましたが、日本の最優秀な若者はオールドエコノミーに吸収されていった。これは見ていてつらかったです。

20年経って、ようやく起爆の芽が育ち始めた。20年後の2040年がものすごく楽しみです。江副さんのDNAを受け継いだ「江副チルドレン」が巣立つ場面を追いかければ、大西さんはもう1冊、本が書けるわけです。本当に取材されたらいいですよ。僕はそういう若者たちと毎日のように会っているのですが、みんな本当にすがすがしい。

――2000年代の「西麻布でイエー!」みたいな人種ではないのですね。

彼ら、彼女らは、そういうのに価値を感じていないですね。まあコロナ禍で物理的に六本木でイエーができない部分もありますが。早く上場したいとか、ガツガツと時価総額を上げたいとかは考えていない。悲壮感はなく戦略的。ロマンチックだけど合理的。

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