「成田発成田着」遊覧チャーター飛行が人気の訳 1時間で完売、3時間の遊覧飛行に新たな価値

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2020年12月12日の「アーリークリスマス」フライトで、離陸直前の機材を見送るANAスタッフ(記者撮影)
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航空需要が急減したコロナ禍。国際便の運休や欠航が目立つ成田国際空港で、一風変わった「成田発成田着」の遊覧飛行チャーター便が人気を集めている。

国内最大手の全日本空輸(ANA)は2020年夏以降、ウミガメの塗装を施したエアバスA380型機を用い、遊覧飛行を5回以上実施した。抽選倍率は初回が約150倍、2回目も約110倍。

業界2位の日本航空(JAL)が2020年9月に実施した遊覧飛行も、電話申込み分チケットが1時間で完売する人気ぶりだ。

飛ばない飛行機は費用がかさむ

コロナ前だと、遊覧チャーターは初日の出に開催される程度だった。それがコロナ禍で実施される背景には、稼働率の下がった航空機を維持・整備の観点から定期的に飛ばさざるをえない事情がある。

成田空港には旅客を運ぶ機会の減った機材がずらりと並ぶ(記者撮影)

航空機は、飛行しない期間が長期化すると、定期的に飛行させている時以上に維持・整備の費用がかさむ。それを防ぐため、航空会社は乗客なしでも飛行機を飛ばす「フェリーフライト」の実施を余儀なくされていた。

ANAは国際線専用のA380でフェリーフライトを実施。これを知った利用者から、「遊覧飛行のように旅客も搭乗できないのか」という問い合わせがあったという。

チャーター便など国内旅行の企画を担当するANAセールスの旅行事業本部・朝長良之副本部長は「初日の出の遊覧飛行は実施していたが、通常期に遊覧飛行を旅として受け入れてもらえるのか不安だった」と振り返る。

「羽田や成田に行くと、多くの機材が駐機し、非常にショッキングな光景。飛行機の役割は空を飛ぶことなので、なるべく飛ばしたい」(朝長氏)。企画実現に必要な空港運営の部門に声をかけ、少しでも収入を積み増したいANA本体も巻き込んで企画を進めた。

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