日本経済の足を引っ張る「ワクチン接種遅れ」 コロナの経済影響は欧米ほど大きくなかったが
欧米では10〜12月期に多くの消費者が自宅にとどまることを余儀なくされたが、日本の人々は旅行し、外食に出かけ、映画館に足を運んだ。「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」という映画が、この期間に日本の興行記録を更新したほどだ。政府の旅行補助金も国内観光産業の浮揚につながった。もっとも、これは感染拡大につながった可能性がある。さらに、政府の大規模経済対策が雇用の維持と企業の存続を支えた。
それでも、2020年通年の実質GDP成長率は前年比4.8%減となり、リーマン・ショック後の2009年に次ぐ落ち幅となった。
接種遅れで経済はしばらく下り坂
日本経済はアメリカほどの落ち込みにはさらされていないが、2021年1〜3月期は再びマイナス成長に転落するとみられている。
1日当たり新規感染者数の急増を受け、日本政府は1度目よりは限定的なものだったとはいえ、1月早々に2度目の緊急事態宣言を発出している。当初は1カ月間の予定だったものが、その後、3月上旬まで延長された。1〜3月期は「緊急事態宣言のため、個人消費、特にサービス関連の支出が低下する」と大和総研のエコノミスト、山口茜氏は話す。
ワクチン接種でほかの主要国に出遅れたことも、今後の経済に影を落としている。最前線で働く医療従事者に対しては、今週から接種が始まる予定となっているが、一般の人々に順番が回ってくるのは、まだ何カ月も先だ。
確かに、日本はコロナ禍で欧米ほど深刻な被害は受けていない。とはいえ、しっかりとしたワクチン接種計画があれば、人々の安心感が高まり、客足の戻りも強まるだろう。長期にわたって経済を元の軌道に戻すには「ワクチン接種率を上げる以外にない」と第一生命経済研究所の永濱氏は言う。「ワクチン接種が進まないことには、どれだけ金融や財政で支えても、らちがあかない」
(執筆:Ben Dooley記者、Makiko Inoue記者)
(C)2021 The New York Times News Services
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら