専門家が検証「クラブハウスの音はなぜ良いか」 「Zoom」や「Teams」より格段に話しやすいワケ

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Clubhouseで筆者が立ち上げたトークルーム(筆者撮影)

一方で声だけの場合は心地よいものの、生活ノイズや屋外での暗騒音が混じり始めると、途端に得意なはずの声の質も下がる。1人当たりが送信できる音声向けの帯域は実は狭く、圧縮率もかなり高いのだろう。同じOpusを採用する音声サービス「Discord」よりも1音声当たりの帯域は狭い、つまり圧縮率はむしろ高い。

ではなぜ心地よい音だと感じるのだろう。

それは事前処理での整え方が優れているからだ。背景ノイズを抑え、声質を左右する帯域以外の音声情報をフィルターすることで圧縮効率を高め、結果的に声の品質を上げているのだ。前述したように、声以外の帯域に多くの情報が入ってくると、体感できるほど音質が落ちる。言い換えれば、声以外の情報をいかに省略し、ちょうどいい音量で抑揚も失わずにニュアンスを伝えるかにフォーカスしているのだ。

一方では想定外にノイズの多い音声が入ってくると、人の声が小さく聞きにくくなる現象も頻発する。声に特化した事前の音響信号処理が適切に行えない状況では、Clubhouseの心地よさは失われると考えたほうがよさそうだ。

また現時点ではiOS向けアプリしかないClubhouseだが、iPhoneに加えてiPadでも利用できる。ところがiPadではClubhouse持ち前の音声の聞きやすさが発揮されず、また暗騒音も拾いやすい。

「話者」として参加する際のコツ

理由は、iPhoneが電話機として設計され、複数のマイクを駆使して背景ノイズを抑えたり、聞き取りやすい音声にするための事前処理を行うからだろう。同じアプリでもiPad系デバイスはより幅広い範囲の音を拾いやすく、音質も硬くなりがちだ。

また音声処理DSPやマイク仕様が異なるためか、iPhoneの世代によっても声の質は異なる。さらに厳密にいえば、同じiPhone 12シリーズでもモデルによる聞こえ方の違いがある。筆者自身が話者になっていたため、最終的な音質を自分自身では確認できていないが、iPhone 12 miniと12 Pro Maxでは、後者のほうがシャープな声になるようだが、12 miniのほうが柔らかく耳あたりのよい声になるため好ましいと感じる人が多かった。

とはいえ、近年のiPhoneであればどれを使ってもいい音で拾ってくれる。一方でワイヤレスイヤホンを使う際には、少しばかり使うデバイスには気をつけたい。

通話機能を持つ人気のBluetoothヘッドフォンやイヤホンをいくつか使ってみたものの、どの製品もClubhouse用として使うとくぐもった音声になってしまった。これは有線で接続する4極端子を用いる有線イヤホンマイクでも同じだ。

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