気仙沼 男山本店の再建に見た復興10年の重み 震災で建物が倒壊、変化を恐れなくなった
まずは本業である、男山本店の現在の業績はどうだろう。
「コロナ禍で苦戦はしています。当社の生産量は年間約180キロリットル(1.8リットル換算で10万本)で、昨年3月まで前年並みでしたが、翌月は半減。ただ4月が底で、5月以降は盛り返し、10月には100%に戻りました。通年では対前年比で約80%です」(菅原氏)
この数字をどうみるかは意見が分かれるだろうが、健闘しているように感じた。
「当社のような地酒メーカーは、外食での需要や贈答品需要が多く、消費者の外出自粛や飲食店の営業時間短縮の影響を受けています。巣ごもり消費が続く中、手軽に楽しめる『家飲み』需要への対応も不十分でした。
一方で地域の消費者が支えてくださり、直売は健闘。以前から他社とのコラボ企画や通信販売も進めてきました。まだ売り上げ規模が小さいECですが、コロナ禍で倍増しています」
同社は2018年頃からリブランディング(ブランドの再構築)を行い、代表商品の「気仙沼 男山」(漁師町らしい辛口)や「蒼天伝(そうてんでん)」(魚料理に合う、少し柔らかい味)、「美禄」(春夏秋冬で味を変える)の日本酒3本柱を中心に商品を展開する。
原料に使うコメも「ひとめぼれ」「ササニシキ」、酒米「蔵の華」という宮城県産の地元米のほか、「山田錦」(兵庫県)、「雄町」(岡山県)なども使用。
1月に販売されたコラボ企画「クラフトビール」の製造にも携わるなど積極姿勢だ。
震災で修羅場を体験した
菅原氏が公職に一段と注力し始めたのも震災以降。やはりそれだけの修羅場体験だった。
10年前の「3.11」当日、菅原氏は社内で仕事をしていた。そこに経験したことのない激しい地震。沿岸で暮らす気仙沼市民は、以前から津波に備えた避難の意識を持っており、高台に避難した。そこから周囲の建物が津波にのみ込まれるのを呆然と見つめた。
「幸いだったのは、少し高台にあった築100年の酒蔵が無事だったことです。門の手前数メートルのところで津波が止まり被害を免れた。震災翌日から温度管理などの業務を再開しながら、すれすれで助かったことを振り返っていました」
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