気仙沼 男山本店の再建に見た復興10年の重み

震災で建物が倒壊、変化を恐れなくなった

男山本店の主力商品(写真:男山本店)

まもなく10年。

東北地方を中心に、人々を奈落の底に突き落とした「東日本大震災」が起きたのは、2011年3月11日のことだ。当地を襲った地震や津波の惨状を覚えている人も多いだろう。

経済やビジネスを主なテーマにする筆者は、復旧の兆しが見えた2012年1月から被災した東北各地や北関東を何度も訪れ、地域の経営者や生活者に話を聞いてきた。

コロナ禍が続き、日本全体に閉塞感が広がる2021年――。被災地の企業とそこに生きる人々はどんな思いで日々の活動を続け、暮らしているのか。

今回は日本有数の漁港として知られる「宮城県気仙沼市」に足を運び、現地の実情を探った。それを3回に分けて紹介したい。まずは創業100年の酒造メーカーの話から。

国の文化財に指定された本店を再建

2020年7月15日、当地の国登録有形文化財の建物が再建された。1912年(大正元年)創業の地酒メーカー「気仙沼 男山本店」(宮城県気仙沼市入沢)の店舗だ。 

営業再開後、地元の生活者や観光客が次々に店を訪れ、銘酒を買っていった。昨年の「Go Toトラベル」キャンペーン時期は一段とにぎわったという。

震災により、男山本店のシンボルだった昭和初期の建造物は3階部分のみ残して倒壊。SOC基金(東日本大震災被災文化財復旧支援事業)によって応急保存されていた店舗が復元され、営業を再開した。

単なる美談ではない。当初、男山本店の4代目・菅原昭彦社長は再建に慎重な姿勢だった。目の前は「内湾(ないわん)」と呼ばれる地区で、気仙沼湾を巡る遊覧船の発着場所もあり、津波後に新装された観光施設や飲食店が立ち並ぶ。

「ウチの店舗の復元が、新しい街づくりの足かせにならないか」と懸念し、再建費用にも気が重かった。結局、自己資金と各種の支援策などで資金のメドはついた。

実は、菅原氏は気仙沼商工会議所会頭でもある。就任したのは震災後の2013年で当時51歳。地方の商工会議所会頭としては屈指の若さで、現在も“若手の会頭”だ。

後述するが、地域一体で気仙沼市が進める「観光経営」を担う立場にあり、部分最適ではなく、全体最適(気仙沼の魅力訴求)の目線でも考えているのだ。

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