日本人に3ナンバー車は余りしっくりこない訳 5ナンバー車や軽が売れる鍵はサイズ感にあり

拡大
縮小

しかし、アメリカなどはともかくも、欧州は日本と同じように道幅が広いわけでもなく、業界内の競争のために大型化することの意味は見いだせなくなってきている。消費者も、はじめのうちは前型に比べ立派に見えると大型化を喜んだかもしれないが、物事にはほどよい加減というのがあって、限度を超えれば持て余すことになる。

欧州車でも、最新のルノー「ルーテシア」は前型より車体を小型化してきた。業界でBセグメントと呼ばれる大衆車が、あまりに大きくなりすぎて持て余すようになったのだろう。当然の結果だ。

今も道幅や駐車枠は1960年代とほぼ変わらない

日本においても、今日なお、道幅や駐車枠は、1960年代のモータリゼーションが起きた当時とほぼ変わらない状況にある。当時のモータリゼーションを牽引したのは、大衆車のサニーやカローラ、そしてホンダ「シビック」などであり、それらは5ナンバーでも小柄なほうであった。

トヨタ「クラウン」や日産「セドリック」といった上級4ドアセダンも、当時は5ナンバー車が主体であった。その時代につくられた道路や駐車枠がそのまま今も存在するのである。

現在の軽自動車は、1960年代のサニーやカローラと車幅はほぼ同じだ。軽自動車が売れる背景にあるのは、単に価格や税制、保険代、維持費の安さだけでなく、日本のモータリゼーションを築き上げた1960年代の大衆車の大きさにもあるだろう。国内の道路や駐車場環境で最も扱いやすい車種であるためだ。

その軽自動車も、いまの軽自動車規格へ車体寸法が拡大されたのは、衝突安全性能を登録車と同等にするためである。つまり、安全も登録車並みであるなら軽自動車で十分であり、登録車も5ナンバー車で安全は満たされる。ならば、5ナンバー車がやはり日本では扱いやすいクルマの中核なのだ。

外観の見栄えもデザイナーが工夫し、それまで3ナンバー車が主体だったSUV(スポーツ多目的車)が選択肢に加わったりすることで、5ナンバー車人気が沸騰したのである。

東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

ホンダの新型「フィット」は、日本最適のコンパクトカーという価値を世界基準に育てるとの目標を立て、日本人に受け入れられやすい商品性をつくり込んだ。それが昨年の4位という販売成績につながっている。グローバルカーという目標も、コンパクトカーでは日本の5ナンバー基準で達成できることを証明した。

昨年のベスト15位の中に、トヨタ車が12台(5台が3ナンバー車)、ホンダ車が2台、日産車が2台という内訳である。ここに登場しなかった自動車メーカーも、改めて、5ナンバー車の開発をしっかりやることが、国内販売を強化するカギとなりえると私は思っている。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT