インドネシア鉄道、地方でも「205系」が快進撃 元武蔵野線、首都圏以外で初の電化区間に登場

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今回の電化開業の大きなポイントは、この区間の都市間列車の運行がKAIからKCIに委託されたことである(厳密には昨年10月1日付で先行的にプラメクスの運行を移管している)。KCIは2017年9月にジャカルタ首都圏鉄道からインドネシア通勤鉄道に社名変更し、将来的な地方部への運行参入に意欲を示していた。結果的にジャカルタでの安定したオペレーションが評価され、晴れて今回の参入に至った。

電車化により、同区間はこれまでプラメクスが通過していた(旅客営業休止中だった)各駅にすべて停車するようになる。車両が加速のよい電車となり、最高速度も時速90kmに引き上げられるため、停車駅数が増えても所要時間は従来とほぼ変わらない。KCIは都市間輸送に特化したライナー方式の快速電車の運行も予定している。運賃授受システム等の問題からジャカルタではいまだ実現していないが、ジョグジャカルタ地区が今後の新たなサービスの試験運用の場になるかもしれない。

また、現状では各駅の駅間が5km以上と非常に離れているため、今後はジャカルタ首都圏と同様に不動産開発と一体になった新駅設置なども進んでいくだろう。

ICカード導入で電子マネーにも変化?

運営がKCIに切り替わることで、乗車方法も大きく変わる。従来は駅の窓口またはスマホアプリで乗車列車を指定してチケットを購入しなければならず、とくにプラメクスはプラチナチケットと化しており、当日のチケット購入はほぼ不可能という状況だった。電車化によって定員制が撤廃され、今後はジャカルタ同様に、ICカードで自動改札機をタッチ&ゴーで通過できるようになる(当面の間はソーシャルディスタンス確保のため、混雑時には乗車制限を実施予定)。

各駅に設置された自動改札機と券売窓口。写真はプルウォサリ駅(筆者撮影)

以前の記事(「インドネシア版『Suica』はQR決済に勝てるか」)で紹介した通り、KCIが発行するICカード「KMT」はソニーのFelica規格である。地方部での電子マネーはQR決済式が主流となりつつあり、KCIの自動改札機もすでに対応しているが、利便性は圧倒的にICカードに軍配が上がる。首都圏外の電車利用者の拡大はKMT発行枚数の増加を後押しするだろう。

気軽に乗車できる鉄道の登場は、地方部における公共交通復権の象徴とも捉えられているが、同時に整備、改良が進むジョグジャカルタ、ソロ各都市のBRT網とのICカード共通利用化も期待したい。

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