信号未完成「空港線」はぶっつけ本番で走った 工事完了と同時に、客を乗せた列車が通過

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ジャカルタ中心部とスカルノ=ハッタ空港を結ぶ空港線試運転列車の運転台から見た車窓。信号は点灯していない(筆者撮影)

ジャカルタ都心部のスディルマンバル(BNIシティ)駅とスカルノ=ハッタ国際空港駅を結ぶ、空港特急が週明け12月18日にも運行を開始する予定だ(12月15日時点の情報に基づく)。なお、スディルマンバル―バトゥチェペル間は既存のジャカルタ首都圏鉄道(KCI)の路線を走行し、バトゥチェペルから分岐し、今回建設された新線区間を通り、スカルノ=ハッタ国際空港に至る。当面の間は、途中駅に止まらない暫定開業の予定だ。

運営するのはインドネシア鉄道(KAI)の子会社、「レイリンク」である。もはや世界でも最悪レベルとなってしまった渋滞都市ジャカルタにおいて、都心―空港間の所要時間はまったく読めない状況で、ゆうに2時間を超えることもしばしばだ。飛行機に乗り遅れないためにはかなり時間に余裕を持って行動する必要がある。

しかし、鉄道が開業すれば、都心と空港は約1時間で結ばれる。あくまでも暫定開業の状態で、かつ通勤電車の合間を縫うように走る過密ダイヤの中では定時運行に関して不安が残るが、空港利用者の長年の悲願がひとまずかなうことになる。

2016年中に開業するはずが…

空港鉄道の建設計画自体は1980年代の我が国によるジャカルタ大都市圏鉄道輸送計画にも含まれていたが、当地における空港鉄道の必要性という認識は薄く、結局実現しないまま2000年代を迎えてしまった。しかし空港利用者は近年急増。第3ターミナル建設を含む、スカルノ=ハッタ国際空港の改良計画が持ち上がり、あわせて都心までの空港鉄道の建設も盛り込まれた。

この時点で空港鉄道はどの区間を、どのルートで結ぶかはまったく決まっておらず、具体性を欠くものだったが、最終的に用地買収・建設費用・工期を大幅に削減できる既存線活用案に決定した。2018年の第18回アジア競技大会のジャカルタ開催が決定したことが追い風となり、ようやく2015年末、空港駅側から建設着工となった。

空港線建設はインドネシア運輸省の予算と建設会社により実施。車両については先にレイリンクが国際入札を実施し、国営車両製造会社(INKA)が納入することが2013年には決定していたものの、正式契約が結ばれたのは2014年末である。このときには2016年中に開業するとされていたが、工事着工の遅れからか、その後の政府発表では2017年3月開業予定となった。

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