信号未完成「空港線」はぶっつけ本番で走った 工事完了と同時に、客を乗せた列車が通過

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しかしながら、いくら用地買収が少ないといってもゼロというわけではない。空港用地外の住宅密集地では用地買収が難航した。それでも2017年3月開業という強気な目標は覆さなかった。

空港駅に停車中の試運転列車(筆者撮影)

そして迎えた2017年3月、各駅部はおろか、新線建設区間の工事は空港敷地内を除いてまったく終わっていない状態。バトゥチェペル駅付近ではまだ線路予定地に住宅が建っていた。それでも運輸省側は開業目標を撤回せず、4月1日の全国ダイヤ改正でも空港線ダイヤを盛り込ませ、公式発表していたのである。遅々として進まない工事に業を煮やしたブディ・カルヤ・スマディ運輸相がバトゥチェペル駅に自ら視察に赴いても状況は変わらず、開業は7月、そして9月とその都度延期されてきた。

現場を見れば誰でも期日どおりの開業は無理とわかるのだが、政府の命令は絶対である。運輸省はおうむ返しのごとく政府の定めた日程を直前まで言い続けるしかなく、期限が過ぎるとその都度、担当職員が更迭されていった。しかし、もうごまかしも利かなくなった。今回は、1カ月の暫定営業を経て、2018年初頭にはジョコ・ウィドド大統領立ち合いの下、本開業式典を開かねばならないといわれている。

複線のはずが、単線だった

11月上旬、運輸省はレールがつながっていない状況下で空港線に乗客を乗せた試運転列車を11月25日に走らせると発表した。もう時間がないため、ぶっつけ本番、営業車両をいきなり入線させて初の試運転を行い、その列車には乗客も乗せて走らせるというのである。

これまでKCIの新路線開業の例を見ても、まずは事業用気動車に乗務員を添乗させ入線確認、そして電車入線試験、それから試運転という最低限の手順は踏んでいる。それをいきなり電車を入線させて、お客まで乗せるというのである。はたして本当に25日、乗客を乗せた試運転列車は走ったのか。

試運転の前日、空港方面の線路は途切れていた(筆者撮影)

まずはその24日、筆者は最も進捗が遅れているバトゥチェペル―空港間の建設現場に向かった。数週間前にレールが途切れていた箇所にはバラストも散布され、しっかり路盤ができ上がっていた。

安心したのもつかの間、バトゥチェペル駅から3kmくらい進むと、下り線(空港方面)の線路は途切れていた。これでバトゥチェペル―空港間は本来の複線ではなく、一時的な単線運転が確定となった。

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