インドネシア鉄道、地方でも「205系」が快進撃

元武蔵野線、首都圏以外で初の電化区間に登場

ジョグジャカルタ―ソロ間の電化事業は、すべてインドネシアの運輸省予算と国営電力会社PLN、国営信号会社LENを中心としたローカル企業コンソーシアムによって実施され、1兆2000億ルピア(約90億2500万円)が投じられた。工事は2019年に信号関係から着工した。2020年初頭には架線柱の1本も立っておらず、はたして年内に試運転が始まるのかと訝しく思ったものだが、幸か不幸かコロナ禍における列車の大幅運休が後押しし、4月以降一気に工事が進んだ。

しかし、ここに至る道のりは長かった。構想自体は1980年代から存在していたといわれるが、基本設計に入ったのは2011年のこと。しかも当初はジャカルタ首都圏の直流電化とは異なる交流電化方式で計画されていた。日本式で統一されつつあるジャカルタの電車システムを入れさせないという思惑が見て取れたが、さすがに議論を呼んだようで、2014年ごろに直流電化方式でようやく決着がついた。

今回電化されたジョグジャカルタ―ソロ間は俗に「南本線」と呼ばれる西ジャワ州チルボンからジョグジャカルタを経由し、東ジャワ州スラバヤに至る約600kmの路線の一部である。南本線の複線化事業は当初、日本の円借款が活用される予定であったが、大部分がインドネシア予算、国内企業による事業に切り替わった。ともかく、一連の電化および複線化の事例は、在来線の改良程度ならば、インドネシアの予算と技術で十分賄えることが証明された。

国は「国産車」を推すが…

今回の電化に合わせ、インドネシア運輸省は地上側の電化設備一式の工事とは別予算で、ジョグジャカルタ地区向けに4両編成10本の電車を用意する。これは、ドイツ復興金融公庫による資金援助とボンバルディアの技術で導入された国産電車「KFW」の更新車である。2013年からジャカルタ首都圏で運用を開始したものの不具合が多発、製造元の国営車両製造会社INKAに返却されていたのをリニューアルして投入することとした。

スロウォット駅に留置中の205系(左)と入線したKFW。今回客扱いを再開した駅は屋根なし・低床ホームの駅も多い。今後KCIが独自予算で改修するものと思われる(筆者撮影)

現時点で更新が完了し、ジョグジャカルタに配置されているのは3本のみだが、2月10日時点では2本使用、1本予備で十分回せてしまう本数しか設定されないため、問題はない。それにもかかわらず、KCIは昨年武蔵野線を引退して渡ってきた2本の205系を4両編成に短縮し、ジョグジャカルタに転属させた。

運輸省は公式にジョグジャカルタ―ソロ間にはKFWを充当すると発表しており、205系の文言は一切ない。しかし、KCI単独の発表では205系をメインに使い、KFWは予備車と表現している。実際、駅の乗り場案内には205系がデザインされており、KCI公式としては「ジョグジャカルタも205系」なのである。これはいったいどういうことか。

確かにKFWは故障電車のレッテルを貼られており、今回の電化開業の来賓向け土産として模型製作会社がKFWのディスプレイモデルを提案したところ、「壊れる電車は嫌だ」とKCIに断られ、結局205系になったという話もあるほどだが、そう簡単な話ではない。

次ページ車両に見る国とKCIの微妙な関係
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