車載用「強化ガラス」の需要が高まっている訳 電動化や自動運転を見越して各社が開発に注力

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展示会では、ほかにホビー用ラジコン機器で知られる双葉電子工業でも、車載ディスプレイ用ガラスを展示した。自動車部品の製造も手掛ける同社では、従来エアコンのスイッチなどに用いられる有機ELディスプレイなどが、多くの自動車メーカーで採用されている実績を持つ。だが、車載ディスプレイの大型化や多機能化は、空調などの操作もタッチスクリーンなどで可能となってきているため、同社担当者によると「今後は需要が減少する」可能性があるという。そこで、新規参入したのが車載ディスプレイだ。

双葉電子工業の有機ELディスプレイ(著者撮影)

双葉電子工業が展示したのは「合わせガラス加飾カバー」というもので、複数のガラスを重ねるなどの処理により、割れても破片が飛び散らないように工夫されたものだ。ちょうど自動車のフロントガラスでも、衝突などでヒビは入るが、割れないことにヒントを得て開発したという。ちなみに同社が車載ディスプレイ用カバーにガラスを採用したのも、日本電気硝子と同様の理由だ。「樹脂では質感が劣る」という理由でガラスを選ぶ自動車メーカーが多いためで、また安全上の理由から割れない処理を必要とされているというのも同じだ。

双葉電子工業の合わせガラス加飾カバー(著者撮影)

さらに同社では、指を近づけるだけで操作ができるホバータイプのタッチディスプレイなども開発している。こういったディスプレイは、今後の実用化が期待される自動運転車で、乗員がまるで自宅のリビングにいるような快適性や居住性を演出するために用いられることが期待されている。

双葉電子工業のホバータッチディスプレイ(著者撮影)

自動運転を見越した車載ディスプレイ開発競争が激化

完全な自動運転が行われる場合、ドライバーは座席を後ろに回転させて後席の乗員と会話したり、シートをリクライニングさせて音楽や動画などのエンターテインメントを楽しんだりすることが可能となる。ほかにも空調などの操作や車内照明の制御など、今までの自動車以上にさまざまな装備が搭載されることが考えられていて、それらを直感的に操作できるタッチディスプレイは、現在多くの企業で開発が進んでいる。

双葉電子工業も、そういった新規需要が見込める新製品として、タッチディスプレイやカバー用ガラスなどを開発している。特にホバータイプのタッチディスプレイは、指でディスプレイに触らずとも操作が可能なため、コロナ禍における感染対策製品としての需要も見込める。

電動化や自動運転、コネクテッドなど、技術革新が進む自動車分野では、ことディスプレイだけを見てみても、多くの企業が新たな試みや取り組みを行っている。その将来像はまだ見えてこないが、ユーザーにとってより有益なものとなることに期待したい。

ホンダeに採用されたダイノレックスにさまざまな処理を施した展示例と一般的なガラスとの比較(メーター画面時/ナビ画面時)(著者撮影)
平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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