「影響力のない人」は相手との関係が見えてない 同じ話でも人によって説得力に差が出る理由
これは一例にすぎませんが、周囲の人に影響力を発揮し、相手を動かしたいと思うなら、自分が何を話したいか、どう見せたいかを考える前に想像力を働かせるといいでしょう。
「どうすれば、そうしたくなる気持ちを相手に起こさせることができるだろう?」と。あなたの言葉で相手を説得し、動かすには前提として聞き手に「これは自分に関係している話だ」と思ってもらう必要があります。
ところが、多くの人は誰かに話をするとき、自分の言いたいこと、主張したいこと、伝えたいことから話してしまうのです。熱意があればあるほど、その傾向は強くなります。
しかし、聞き手からすると自分との関係性が見えない話をいくら熱心に投げかけられても、苦痛でしかありません。実際、脳の仕組みも興味関心のない話題は長期記憶に残さないようにできています。
ですから、あなたがいくら熱く語っても聞き手と話の内容の間に関係性が築かれていなければ、空回りで終わってしまうのです。あなたが正しいと信じる価値観を押しつけても、影響力は働きません。
相手のニーズに合わせるだけでは主導権が得られない
ただし、ここで勘違いしてしまいがちなことがあります。それは「相手のニーズに合わせ、相手の欲しているものを差し出すことが影響力を発揮する近道だ」という考えです。
確かに、聞き手のニーズを聞き出し、それに合う話をすれば関心は得られるでしょう。しかし、そこで話す内容はあなたが伝えたいメッセージでしょうか? 相手のニーズに合わせた会話の流れから、説得力を発揮することができるでしょうか?
ニーズを探し、相手にただ迎合してしまうと、聞き手のほしいものしか与えられなくなります。そもそも影響力を発揮する目的は、相手を説得し、あなたの望む行動をするよう促すためなのですから、いつも相手のニーズを満たす、いい人になっていては意味がないのです。
では、相手のニーズに合わせるのではなく、相手を自分の望む方向に動かしたい場合、どうすればいいのか。そのためには、主導権はあなたが握ったうえで、あなたが与えたい影響を、相手が自ら必要だと思うようにラベリングすることが重要なのです。
例えば、ある勉強法を広め、生徒を増やし、著作を多くの人に買ってもらいたいと思うなら、最適な表現の方法は「私がオススメするこの方法には、こんなすばらしい効果があります!」ではありません。
「あなたは勉強中、集中が続かなくて悩んでいませんか? ある方法を試すと、すばらしい効果が出ることが心理学の研究で明らかになっています」と切り出しましょう。