個人投資家のヘッジファンド攻撃が示すリスク 個人マネーが市場のボラティリティを高める
今後はSEC(証券取引委員会)の調査が行われ、下院金融サービス委員会と上院銀行委員会は公聴会を開く予定だ。
市場関係者の多くから、今回のSNSを使った扇動行為は、純粋な投資行動ではなく価格形成を歪めるとして、何らかの対策を打つべきだという意見が聞かれる。
他方で、ロビンフッドが安易に個人に過度なリスクを取らせているとの批判や、ロビンフッドとヘッジファンドとの不透明な関係、加えて私設取引所において証券会社がヘッジファンドを優遇し個人の情報を利用しているのではないかという指摘が以前からあった。このため、むしろヘッジファンドやロビンフッドを問題にすべきだという主張もある。
特に民主党左派はヘッジファンドやロビンフッドへの批判を強めている。リーマンショック後の金融改革で活躍したエリザベス・ウォーレン上院議員はSECに調査を求め、ロビンフッドが個人投資家の取引を一時停止したことについて、「投資家に警告なしにルールを変更した理由、ヘッジファンドとの居心地のよい関係、ユーザーがそうした問題を訴えることをブロックする強制的な仲裁条項について、答える必要がある」とツイッターでコメントした。
SNSを通じた情報発信に対する規制は難しい
SNSを通じた「あおり行為」は、公開でやりとりされていることでもあり、違法な「共謀」や「株価操縦」にあたるかどうかの判定は難しい。機関投資家や大物投資家のポジショントークは日常茶飯で、個人だけ取り締まるというのも筋が通らない。
今回、SNSを通じてヘッジファンド攻撃を仕掛けた個人投資家にはコロナ禍でにわかに投資に参戦した経験の浅い投資家が多いようだ。商品市場に詳しいマーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役によれば、「掲示板には銀をめぐって、投資銀行が売りポジションを抱えているとか書かれたが、そのような事実はない。インフレと商品投資をめぐる理解などにおいても、間違った情報が数多く上げられている」という。合理的な投資目的ではないため、結局、攻撃を仕掛けた側も自爆している面もある。
そうしたことから、市場参加者の間では散発的な仕掛けで持続性はないので、静観しておけばよいという考える人も多いようだ。実際に、今回はアメリカの金利やドル相場にはほとんど影響がなかったため、金融市場全体の大きな暴落にはつながらなかった。しかし、今回、あらためて明らかになったことは、リーマンショック後の10年で市場の構造が変わり、投資銀行や証券会社に代わって、個人も含めた最終投資家が大きなリスクを負っていることだ。
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