中国だけではだめなのです 百度は中国企業じゃないから
2008年末には2億人に届くという中国インターネット人口。この巨大市場を舞台に、百度(バイドゥ)は検索エンジン分野で世界3位に浮上した。本国ではウェブの巨人・米グーグルを瞬く間にシェアで抜き去り、次なる市場はここ日本。1月に日本サイトを立ち上げた李CEOに戦略を聞いた。
(週刊東洋経済2月23日号より)
「老板(ラオバン=経営者)になるなんて、昔は考えたこともなかった」。そう振り返る李彦宏の人生は、研究者を志し1991年に渡った米国で一変した。爆発的成長を遂げる現地のネット産業で働き、気づく。「知識と技術があれば豊かになれる」。帰国し立ち上げた検索エンジンは、今や自国シェア7割。違法な音楽ダウンロードサイトへのリンクをめぐる著作権トラブルなどを抱えながらも、”中国的谷歌(中国のグーグル)”としてなお成長中。上場している米ナスダックでの時価総額も8595億円(2月8日現在)に上る。中国ネット産業のサラブレッドがさらに先に見据えるのは、世界で支持される検索サイトだ。
--発表から1年、ついに日本向けサイトが始動しました。今後の戦略は。
日本サイトが提供しているサービスは、現在はまだ基本的なものです。ウェブ検索のほかに、画像と動画、ブログの検索機能があります。もちろんすべて日本語。さらにこれから日本のユーザーへの理解を深めながら、絶えずサービスを充実させていきます。ネット業界は非常に速いスピードで発展していますが、百度はその変化につねにキャッチアップし自己変革ができる。それが強みです。だからこれから何をするか、実は僕自身もわからないんですよ(笑)。ただ言えることは、真剣に日本のユーザーとニーズを研究するということです。
百度はこれまで、中国のローカルユーザー固有のニーズに応えてサービスを展開してきました。MP3検索や(質問掲示板の)「知道」、(画像掲示板の)「百度貼」などは、非常にユニークなサービスです。日本サイトは今はユーザーの期待の3割ぐらいを満たせていると思いますが、これからもっと充実させてヤフーとグーグルのユーザーを一人ずつ取り込んでいきます。
--ヤフーとグーグルとで日本の検索エンジン市場の8割を占めています。2強寡占のこの構図を崩せますか?
確かに難しい。前方のリーディング企業を追い越すためには、僕ら後発組はしばらく忍耐が必要でしょうね。1歩ずつ進みます。もちろん速く進むことができればそれに越したことはありませんが、数年待つことも覚悟しています。構いません。ゆっくりと日本のユーザーを理解し、最高の検索エンジンを作ってみせますから。
ただ、日本では検索エンジンは成熟産業と思われていますが、実はそうでもありません。日本はGDP総額では世界2位の経済大国ではありますが、検索エンジン市場の規模は決して世界2位ではない。その一方で英国はGDP規模では日本を大きく下回るにもかかわらず、検索市場は日本の倍以上あります。