ゲレンデに客を呼び戻した白馬五竜スキー場の挑戦

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 野村ホールディングス系投融資会社、ユニファイド・パートナーズは、自己資金による投資を行うプリンシパル・インベストメント。同社の水町兵衛氏もこう語る。「マクロ的には下降している産業だが、潜在性を見極め、適切な施策を打てば、うまくいくスキー場があるのも確か」。

2~3年前から、スキー場は新たな投資対象として注目され、異業種からの参入が増えている。ユニファイド・パートナーズは、07年5月、長野県の奥志賀高原スキー場を長野電鉄から取得し、06年に取得した北志賀竜王スキー場とともに、スキー場経営に乗り出した。

今シーズンはまだ計画立案の段階だが、2月には実験的に早朝営業を実施した。堅く締まった朝一番のゲレンデに最初のシュプールを描く快感は、スキーヤーなら誰もがあこがれる。だがそのためには、未明のうちに圧雪を行わなければならず、カネも人手もかかる。わかっていてもできなかったこのサービスに、奥志賀高原ではチャレンジした。「今後も投資効果を考えながら、戦略的な投資を行い、奥志賀高原という素材を客のニーズに適合させていきたい」と水町氏は語る。

スキー場運営に乗り出した企業の中には、ほかに投資ファンドも目立つ。だが、これら投資ファンドが取得したスキー場で経営が大きく改善したところは、現時点ではほとんど見当たらない。前出の坂倉氏も「ファンドによる運営は効率化によるコストカットが主で、キャッシュフローは改善されても、売り上げは増えていないケースが多い」と言う。

約5年でのエグジット(売却)を前提とした短期的視点では、思い切った投資ができないのも確か。「ファンドが再建に行き詰まって転売し、2~3年後にスキー場の再々編が起こる可能性もある」と坂倉氏。

スキー人口の減少は当面続くだろう。その現実にどう歯止めをかけ、活気を取り戻すか。結局それは、いかにしてスキーの魅力を最大限伝えることができるか、経営者の前向きな発想と実行にかかっている。
(週刊東洋経済:堀越千代)

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