例会が終わったあとは立ち話をしたり、時にはお茶を飲みに行ったりできないのがオンラインで残念なところ。その一方で「自宅にある思い出の品を画面に映して見てもらうといった楽しみもあります」と、赤尾さんはオンライン月例会にも積極的に参加している。
昨年12月、東京でもひだまりの会を設立した。12月にはオンライン講演会を実施。「月例会など今後の活動は、コロナ感染状況をみながら検討していく」(東京事務局の宇屋貴氏)とのことだ。
ひだまりの会の会員が中心となって立ち上げたグリーフケアのNPO法人もある。遺族支え愛ネットだ。本部開催のひだまりサロン、毎月開催している分かち合いの会「ささえあい暖話室」や地域サロン、自主的なクラブ活動などを定期的に行っている。
理事を務める清水太三郎さんは「妻を亡くしたあと、公益社のひだまりの会に参加して元気をもらった。今度は自分がお返しをして元気になっていただきたい」と、支え愛ネットの本部活動に携わっている。「自分よりもご高齢の方々が頑張っておられるのをみて、自分もやらなければと理事を引き受け、微力ながら頑張っています」。
多死社会でグリーフを抱える人が増加
「男性は妻を亡くすと、がくっとくる」と語る清水さんは、なるべく外出するように心掛けたという。趣味で続けているソフトボールなど、何かに熱中しているときは忘れることができる。そして家に帰ったら、また寂しくなる。それを繰り返しながら、元気を取り戻していった。
支え愛ネットは現在、コロナの影響で活動がいったんストップしている。今は隔月に発行している「ささえあい便り」が会員とつながる唯一の手段。「普段は活動に参加されない会員も便りを楽しみにしています」と清水さんは言う。
死生学、悲嘆学が専門の坂口幸弘・関西学院大学教授は、グリーフケアの必要性を強調する。「現代は多死社会であり、それは多死別社会でもある。死別によりグリーフを抱える人が多く、それだけサポートも重要になっている」。
グリーフケアでもっとも大切なことは、当事者を孤立させないこと。だが、現在のコロナ禍の状況においては、コロナに対する偏見、差別が懸念される。「コロナで亡くなった方の遺族がそのことをオープンにできず、親しい人にさえ事情を話せないということになれば、遺族の孤立感がさらに深まることになる」。
コロナとは直接関係なくても、外出や人との接触が制限されることで、周囲とのつながりが薄れてしまいかねない。ひだまりの会のオンライン遺族会のような試みは注目されるところだ。
「メーリングリストや電子掲示板への書き込みなどインターネットを使った取り組みはあったが、Web会議ツールを用いたオンラインでの遺族会は新しい試み。有効性は今後の研究課題」と坂口氏。
さらに「対面での遺族会でのようなスムーズなコミュニケーションは難しく、同等の効果を求めることは厳しいかもしれない。一方で、同じ境遇にある遺族が地理的距離や時間的制約を超えて集えるメリットは大きいのではないか」と現時点での評価を語る。
同じ空間、同じ時間を共有することで得られる共感や安心は何物にも代えがたい。だが、オンライン遺族会もアフターコロナにおける一つの価値ある挑戦といえるだろう。
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