ファイザー製ワクチンでアナフィラキシーを発症した21人中、「アレルギー既往はあったが、アナフィラキシーは経験がなかった」人もいた。その4人のそれまでのアレルゲンはそれぞれ、トロピカルフルーツ、貝と卵、ミツバチ刺され、スズメバチ刺されとの記載がある。
もしアレルギー既往者が接種を見合わせていたら、発生率は100万回に2人程度だったかもしれない。しかし当然、接種対象者の数は大幅に減ってしまう。日本人の2人に1人が何らかのアレルギー疾患を持っているとされるからだ(2011年厚労省「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書」)。到底、現実的ではない。
それどころか英国では、医薬品医療製品規制庁(MHRA)が見解を変えている。昨年末に、ファイザー製ワクチンの接種を避けるべき人を、「同社ワクチンの1回目接種後、あるいはその含有成分(PEG、後述)によって過去に、全身性のアレルギー(アナフィラキシーを含む)を経験した人」に限るとの方針に変更した。
昨年12月にアナフィラキシーが発生した直後、MHRAは「ワクチンや医薬品、または食品によるアナフィラキシー経験のある人は、ファイザー製ワクチンを接種すべきではない」としていた。しかし、アメリカと英国での100万回以上の投与実績に基づき慎重に検討した結果、深刻でもワクチンやその成分とは無関係のアレルギー歴のある人々に関し、ファイザー製ワクチンによるアナフィラキシーのリスクが高い証拠は見つからなかったという。
ファイザー製ワクチンを受けられない人については、英国政府はアストラゼネカ製を代替案として提示している。原因と見られるPEGを含まないためだ。同社は9000万接種分を日本国内での製造とし、2月中にも厚労省に承認申請を行う方針と報じられている。
アレルギー既往だがアナフィラキシー未経験の人などは、こうしたことも参考にしながら、かかりつけ医などに相談して接種を判断してほしい。
アナフィラキシーは短時間のうちに起きている
再び最新データに戻ると、ファイザー製ワクチンによるアナフィラキシーの74%、モデルナ製は86%が、接種後15分以内の短時間のうちに起きている。ファイザー製で言えば、最も多いのが接種後10分、その次に多いのが5分もしくは15分だ。30分までとなると、両社製とも9割に達する。さらにその後は適切な処置により、全員が無事に回復・退院している。
そこでCDCは、通常は接種後15分様子を見るよう指針を示している。過去に注射もしくはワクチンでアレルギー様の重い症状が出た人や、原因は問わずアナフィラキシーを経験した人のみ、接種後30分間は様子を見ることとしている。
英国もほぼ同じだ。通常は15分、ファイザー製ワクチンあるいはPEGによるアレルギーのためアストラゼネカ製を接種した人は30分、接種後に体調の様子を見るようにとの指針だ。日本でも厚労省が、「接種後15~30分程度は接種を受けた施設等で待機すること」としている(「新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保に係る自治体説明会」資料より)。
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