ギリシャ財政危機が開いたパンドラの箱

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 ソブリンのリスクが高いとして注目される「PIIGS」(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)は、アイルランドを除けば南欧だ。

欧州の事情に詳しい慶応義塾大学の白井さゆり教授は「南欧は文化的に個人の生活優先で、労働組合が強く賃金が高いので、競争力が低い。インフレ率が高く身の丈に合わない消費を行い、経常収支は赤字。これに対し、ドイツ国民は労働者が賃金の抑制を受け入れ、努力してきたとの思いから、救済には強く反発する」という。

ギリシャはもともと財政赤字が大きく、統計の信頼性すら問題視され、無理して加入を成し遂げた経緯がある。ゴールドマン・サックスの助けを借りて財政赤字の額を粉飾していた事実に至っては何をかいわんや、である。支援について、ドイツの連邦憲法裁判所が、ドイツの国家主権を侵害するものとして違憲判決を下すおそれもある。

ユーロが抱える構造問題は根深い。南欧諸国はインフレ率が高いのに、相対的にユーロの低い金利で調達が可能となった。そのため、ユーロ内部の不均衡はますます拡大。

ユーロに対する信認は実態的にはドイツマルクに対する信認であり、ドイツから見ればフリーライダーだ。南欧から見ればこれがバブルを生み、いま、その崩壊に苦しんでいる。

ギリシャの財政再建の道のりは険しい。財政赤字はGDP対比12・7%。これを今年中に8・7%、2013年までに3%以下に落とす計画だ。消費税は19%から21%に引き上げられる。マイナス成長下での厳しい引き締めに、連日ゼネストが起きている。市場は、危機再燃の可能性は高いと見て警戒している。

白井教授は「ギリシャの銀行はルーマニアやブルガリア、トルコに融資しており、その危機はバルカン半島にも波及する。また、ギリシャの国債や金融債をフランスやドイツの銀行が保有している。EU域内の銀行が保有するPIIGS発行の債券はEUのGDPの4分の1の額に達し、欧州発の金融システム危機再燃のリスクがある」という。

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