ギリシャ財政危機が開いたパンドラの箱
トリシェECB総裁は、そうした市場の懸念を踏まえ、今年末までとしていた資金供給オペの担保基準の引き下げ(本来のAマイナスの基準をBBBマイナスまでに)を延長すると表明した。ギリシャの現在の格付けはムーディーズがA2、S&PとフィッチはBBBプラスでいずれも格下げ方向で見直しとしている。
IMFに頼ればユーロ不信
ギリシャ一国だけならEU内で支援できるが、それをしないのは危機が連鎖すれば手に負えないからだ。
危機再燃の火種は他でもくすぶる。ユーロ加盟国ではないが、EUに加盟しているハンガリー、ラトビアなどIMFの支援を受けた国は厳しい緊縮政策を強いられている。
ラトビアはユーロにペッグしている通貨を切り下げずに我慢している。IMFの融資条件を守れないことが今年中に明らかとなる可能性が高い。
そもそも、不況下での緊縮財政には無理があり、アジア通貨危機ではIMFの構造調整プログラムに対する批判が高まった。当時、IMF管理下に入った韓国やインドネシア、タイなどの経験から、アジア各国は二度とIMFの融資は受けたくないと考えている。
ギリシャ危機で欧州通貨基金(EMF)構想が欧州委員会のバローゾ委員長から提案されたのにも、そうした背景がある。スティグマ(恥辱)とされるIMFの介入を招くことで、ユーロに対する信頼も揺らぐ。
『IMF・使命と誤算』の著者・愛媛大学の大田英明教授は「IMFは財政ばかりに注目し、ラトビアやハンガリー、ウクライナなどの通貨の問題について警告を発するという役割を十分果たしてこなかった」と指摘し、「これまで、IMFは途上国における積極的な資本自由化を推進してきた。