アルストム争奪戦で敗北、どうする三菱重工 ライバルGEが買収でさらに巨大化

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ところが、シーメンス・三菱重工の共同提案を受け、GEは19日、当初のエネルギー部門一括買収計画を大幅に見直した修正案を提出した。

ガスタービン事業は100%取得するものの、その他の事業は折半出資する合弁会社での運営形態に変更。また、原子力関連分野の重要事項についてはフランス政府に拒否権を与えるなど、政府の意向に最大限配慮して譲歩した内容だ。1.7兆円もの買収金額は据え置いたまま、事業形態などの点でもGEが大幅に譲歩したことで、アルストム争奪戦の勝敗は決まった。

終わってみれば、アルストムとフランス政府が得たのは破格の条件だ。アルストムには莫大な現金が入る一方、ガスタービン以外のエネルギー部門は共同事業として残る。フランス政府にとっても、エネルギーインフラ企業としてのアルストム存続に加え、雇用創出義務や政府の経営関与をGEに飲ませたことで、自国の利益は十分守られた。「勝ったGEも、さまざまな足かせを強いられた。むしろ本当の勝者は、アルストムとフランス政府のように思える」と、ある証券会社のアナリストは指摘する。

広がったGEとの差

はっきりしているのは、三菱重工にとって今回の敗北は非常に痛手ということだ。同社が主力とする火力発電設備事業の売上高を比較すると、GE・アルストム連合の事業規模は3兆円近くに達し、三菱重工(日立との事業統合後で約1.2兆円)との差は一段と広がった。

欧州進出の絶好のチャンスを失っただけでなく、発電所の新設需要が期待されるアフリカ、中東などで強いアルストムをGEに奪われた点は、こうした成長地域における今後の競争を考えるうえで大きな誤算だ。

三菱重工は今回の敗北を受けた声明で、「業界をリードする他の企業との提携も視野に入れ、引き続き事業の伸張を図っていく」と締めくくった。より巨大化するGEに対抗するため、三菱重工とシーメンスの提携も一気に現実味を帯びてきた。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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