アルストム争奪戦で敗北、どうする三菱重工 ライバルGEが買収でさらに巨大化

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買収の提案について発表する三菱重工の宮永俊一社長(左)とシーメンスのジョー・ケーザーCEO

両社は6月16日、アルストム経営陣に対して、共同で事業買収・提携の提案書を提出した。

その中身は、シーメンスがガス火力発電用のガスタービン事業を約6000億円で買収。三菱重工は、アルストムに残る「ガスタービン以外の火力発電設備」や「送配電機器」などの事業に総額約5400億円を出資(出資比率は4割)し、合弁パートナーとして事業の経営に参画するというものだった。

本音を言えば、三菱重工が一番欲しかったのはガスタービン。技術的に難しい大型ガスタービンは世界でもメーカーが4社(GE、シーメンス、三菱重工、アルストム)に限られ、アフターメンテナンスを含めて付加価値が非常に高い。しかし、同事業はシーメンスが取得することが今回の共闘における前提条件だった。

それでも、アルストムに残る蒸気タービン、発電機などの火力発電設備事業に参画できるなら、三菱重工にもメリットはある。大型蒸気タービンは収益性の面でガスタービンに劣るが、新興国で潜在需要が大きい石炭火力発電所に必須なうえ、最新鋭の高効率ガス火力発電所でも排熱を利用した二次発電目的で使用される。

アルストムは地元欧州に加え、アフリカ、中東などの新興国が主な地盤。三菱重工としては、同社と組むことで、そうした地域での火力発電所ビジネスに足掛かりが築ける。さらに、アルストムとの合弁事業会社がガス火力発電所を受注した際は、三菱重工のガスタービンが優先的に採用されることになり、同製品の販路拡大も期待できた。

フランス政府が"介入"

今回の争奪戦の勝者を決める決定権を持つのがフランス政府だった。アルストムは同国工業界を代表する企業の1社。しかも、フランスのエネルギー戦略の根幹をなす原発の蒸気タービンなども手掛けているため、国の政治的な介入が避けられなかった。

GEによる買収案が明らかになると、政府は「雇用や原子力産業の独立性、エネルギーセキュリティなどの点で国益が損なわれかねない」と強い懸念を表明。すぐに省令を改め、外資による買収規制業種の対象にエネルギーなどを追加。これにより、フランス政府はアルストムの事業売却に関与する法的権限を握り、政府に認められない限り、外資企業は同社に手出しができなくなった。

共同提案で三菱重工が提示した事業出資比率は4割にとどまり、アルストム側に事業経営の主導権を認めるものだった。中途半端に見えるその出資比率からは、アルストム経営陣と政府の双方から支持を取り付けるために、同社が苦心した跡がうかがえる。

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