配置状況が厳しいのは、看護師や研修医だけではない。上級医師までもが専門外から招集されてきた。筆者の配置されているコロナ病棟を統括する上級医師2人の本業は、循環器内科で高血圧が専門。通常はリサーチ業務や大学で医学生への授業も行う、臨床よりもアカデミックサイドが主なフィールドだ。
このようなバックグラウンドの上級医師が、歯科、眼科、整形外科、セクシュアルヘルスなどから招集されてきた研修医のサポートをしながら、急性期内科――患者の状態が不安定でいつ病状が進行するか、急変するかがわからない――を統轄をしている。
それでもいつも冷静で本業の指導スキルを如何なく発揮して、専門外だらけの研修医や看護師に的確に指示を出し、サポートもしてくれる、信頼の厚い上級医師だ。
ベッド確保に奔走するベッドマネジャー
変異ウイルスは通常のコロナウイルスに比べて感染率が70%高いと言われる。その言葉通りにロンドンに比べて感染拡大は比較的落ち着いていると言われていた筆者の地域でもあっという間に感染爆発が起きた。
病床を管理するのはベッドマネジャー。院内のどの病棟に空きベッドが何床あるかをつねに把握して、救急外来から入院が決まった患者をどの病棟に入院させるかの指示を出すことが仕事だ。
「新規入院患者のベッドの準備はできた?」ベッドマネジャーからの電話を受けた病棟の事務員が私に聞いてきた。病床が空になるということは、患者が亡くなる、ICUを含めた転棟、退院のどれかだ。いずれにせよ、患者がいなくなってから病室を消毒する必要がある。
「あと30分」と筆者の言葉を病棟事務員がベッドマネジャーに伝えると「冗談じゃない、最長15分で用意して!もうA&E(救急外来)には入院待ちの患者があふれているの!」電話越しにキンキンと怒鳴り声が聞こえてくる。
その後も5分ごとに、何度もベッドマネジャーからのあおり電話は病棟にかかってくる。ベッドマネジャーからのこんな電話は今や日常茶飯事だ。それだけ空床には切羽詰まっている事を示している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら