尾崎元規・花王社長--機能性食品からの撤退はない、できれば食用油で再出発
化粧品のブランド構成を価格帯含めて見直す
--カネボウの買収から4年が経ちましたが、依然、化粧品事業は苦戦しています。
合併に伴う今年までのコスト削減効果は、100億~150億円と想定どおり。しかし、収益面では計画と相当に乖離してしまっています。
化粧品市場は世界的に低価格化が進んでおり、高価格の化粧品は苦戦。しかもこの傾向は不景気による一時的なものではなく、構造的な変化だと認識しています。
今までの化粧品市場は2000~5000円の中価格帯のカウンセリング化粧品が5割を占め、5000円以上の高価格帯が3割。2000円未満の低価格のセルフ化粧品はこれまで2割でした。しかし、今はどんどん低価格品に移行しています。
もちろん消費者は、価格だけで動いているわけではありません。しかし、その中で低価格のセルフ化粧品が伸びている理由は、自ら情報を得て、自分で選択する志向が増えているからなのです。「高価な化粧品できれいになりたい」というのは女性の永遠の夢でしょうが、今後は景気が回復してもセルフ化粧品が伸びていくだろう。
--そうなると、コスト構造の改革も不可欠ですね。
中価格帯が中心の時代では、マス広告をかけたうえに、美容部員がカウンセリングするというコスト構造は有効でした。ですが、今後は市場の変化に対応して構造改革が必要。具体的には、ブランド構成を価格帯含め見直すこと。高齢化や敏感肌などに対応する分野に、注力していくことです。今かなりのスピードで、カネボウと花王のソフィーナが一緒になって取り組んでいます。
--景気に左右されなかった主力の日用品についても、最近はデフレの影響はありますか。
トイレタリー市場も徐々にですが、価格の低下が見られます。これは今の日本全体がデフレ傾向にあるということですが、ある程度のところで収まるでしょう。流通関係者も行きすぎた安売り競争の結果、お互いが苦しくなるだけとわかっている。むしろ最近は、原点回帰でお客様にどう楽しく買っていただけるかを重視する動きも、出てきています。
花王としては付加価値を高めることで、小売り関係者が安く売る必要のないものを開発する一方で、さらなるコストダウンにより、安価なニーズにも対応していく。両方を併せてやっていかねばなりません。