加えて、「Go Toトラベル」は、少なくとも始めた時期が的確ではなかったし、そもそも受益対象者が不公平な愚策だった。現在の緊急事態宣言下の飲食店に対する一律一日6万円の補償も、大きな経費が掛かる店には全く不足である一方、儲かっているから黙っているのだろうが小規模な飲食店にあっては「続いて欲しい丸儲け!」の状態だろう。せめて、従業員の雇用継続を前提として、家賃と人件費の一定割合を補填する程度の公平性が必要なのではないか。
首相はさっさと勝負すべきだが「もしも」のときは?
筆者は、菅政権に対して応援・批判の何れかを行う立場にはないが、以下に述べるように、菅政権が急に終了して、経済政策が混乱する可能性に対しては少々懸念を抱いている。
これまでの諸々について、率直に反省を述べて、速やかに修正するなら、国民の支持回復は十分可能だろう。付け加えると、東京オリンピックは「国民の健康と安全の観点から」再延期ないし将来の再立候補を前提とした中止を積極的に(後手でなく、先手で)表明する方が国民に歓迎されるだろうし、何よりもできるだけ早く解散総選挙を行う方がいい。
菅首相の言う「仕事」は、今年1年の間に成果を確定できるものは少ないのだし、総選挙で勝ったなら政権に文句を言う党内勢力は押さえ込める。しかも、野党の支持率は低いままなのだ。愚図愚図と時間を過ごして国民のいらいらを募らせるよりも、テキパキと勝負に出る方がいいのではないだろうか。
コロナ禍のもろもろの不自由の影響もあって、国民にはストレスがたまっている。内閣支持率が更に降下して、「菅下ろし」が実現する可能性が、未だ大きくはないが、ゼロではない、無視は出来ない確率だ。その場合の、経済とマーケットへの影響はどのようなものだろうか。
経済・マーケットの観点から一番の心配は、金融緩和政策の後退と、財政の緊縮方向への変化だ。前者に関してまず見るべきは、日銀の金融政策決定会合メンバーである日銀の政策委員の顔ぶれとそれぞれの任期だ。最も早く退任するのは櫻井眞氏で今年の3月31日の予定だ。次が、政井貴子氏で今年の6月29日だ。
櫻井氏の後任には、野口旭専修大学教授の名前が挙がっており、野口氏は金融緩和政策を支持するブレない論客なので、人事としてのメッセージ性も含めて申し分ない。黒田総裁、若田部副総裁、片岡剛士氏、安達誠司氏、に野口氏が加わると、いわゆる「リフレ派」が5人と過半数を占めるので、しばらくは安心である。仮に政権の交代があっても、金融緩和政策は継続が期待できる。
ちなみに、5人の中では、片岡氏が最も早く、来年の7月に任期を迎える。今年6月に退任する政井氏の後任と共に、来年の片岡氏の後任にも注目しておきたい。問題は、コロナ対策とも関連する財政の動向だ。拡張的な財政政策が維持されるなら、株価には好影響だが、次の政権の主によっては、「財政再建」に重心が寄る心配があるので、気をつけておきたい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)。
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