1月14日にバイデン氏が発表したアメリカ救済法は、予算規模が1.9兆ドル(GDP比約9%)と大規模である。昨年末の9000億ドルの財政政策に追加して、トランプ前大統領が主張していた家計への現金給付を大人1人当たり2000ドルに増やすプランが含まれている。家計への現金給付は少なくとも3000億ドル規模になり、ワクチン接種によって回復する見込みのアメリカ経済の復調を盤石にするだろう。
バイデン政権のいわゆるハネムーン期間において、このアメリカ救済法の半分程度つまり1兆ドル規模の財政出動が、3月までに議会で可決すると筆者は予想している。トランプ前大統領の最後の蛮行で共和党議員の政治的立ち位置が難しくなる中で、バイデン政権が共和党上院議員の一部の賛成を得たうえで、スピード重視で可決されると見込む。
また、バイデン政権は一部の共和党議員との調整を試みると同時に、民主党のいわゆるプログレッシブ勢力(進歩派)の要求に対する政治的対応を迫られるだろう。同勢力が重視する、増税による所得分配強化、ハイテク企業や金融業など勝ち組への規制強化、が早期に実現することが2021年のアメリカ経済にとって最大のリスクであろう。
菅内閣支持率低下でも、野党支持は伸びず
だがこのリスクへの懸念が金融市場で強まるのは、コロナの克服と経済正常化が進むとみられる2022年以降ではないか。少なくとも2021年内は、経済正常化が最優先される穏健な政策が続くとみられ、最高値更新が続くアメリカの株式市場が大幅な下落に見舞われるリスクは低い、と筆者は現時点で考えている。
一方、日本では1月18日に通常国会が始まった。菅義偉首相は施政方針演説において、新型コロナ感染防止を最優先させる姿勢を明確にした。感染拡大を受けて、政権に対する批判が増えて支持率が低下している。
10月までの総選挙を控える日本の政治情勢は、バイデン政権1年目のアメリカより不確実性が高いかもしれない。日本のメディア報道を読むと、「菅首相では総選挙に挑むのが難しい」との雰囲気が自民党内で醸成されつつあるかのようにみえる。
ただ、内閣支持率は低下しているが、自民党支持率を合わせてみれば、政権交代につながるほどの状況ではない。実際、批判するパフォーマンスだけが目立つ野党への国民の支持率はほとんど上昇していない。
また自民党の中でも、菅首相に代わるリーダーとして総選挙の顔になる有望な人材は、ほとんど存在していないと筆者には見える。主義主張が不明確、かつコロナ増税導入などの緊縮的な経済政策に共感する自民党のリーダーが仮に台頭すれば、新型コロナの問題が益々悪化すると多くの国民は懸念するのではないか。
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