今からでも新型コロナへの対応をしっかり行えば、菅首相が政権を保つことは可能と筆者は見ている。具体的には、新型コロナ抑制と経済正常化の双方を実現させるのが大前提だ。新型コロナ患者に対応する医療体制を拡充して、他国の情勢を見ながらも着実にワクチン接種を実現することが必要だろう。
一方で、前回の「2021年も米国株が日本株より上昇しそうな理由」でも述べたように、新型コロナ対応の病床は昨年5月時点対比で大きく減っていると報じられている。米欧に比べて圧倒的に人口対比で感染者が少ないにもかかわらず、日本で医療機関が対応できないことが、日本経済正常化の最大の制約の一つになっている。
医療機関などへの財政支援金は、昨年の補正予算において2兆円規模以上で予算措置が行われたが、これがコロナ治療体制の拡充につながる十分な規模で執行されなかったのだろう。安倍政権の判断で予算措置は行われても、(1)危機に備えた政治判断が行われず、(2)無責任な官僚組織の不作為で歳出が抑制された、と推察される。
医療機関への大規模な財政出動が必須
大規模な財政政策を発動して、民間を含めた医療機関の受け入れ能力を高めることは、有力な政策対応になるだろう。菅首相はこうした見解を持つ著名な民間医師と1月16日に面談したが、遅きに失したとはいえ、この提言が取り入れられれば、医療拡充政策が実現すると見ている。
また、緊急事態宣言発出に伴い、1月15日に飲食店などへの協力金として予備費から約7400億円の支出が閣議決定された。だが、筆者の試算では、緊急事態宣言が1カ月続くと最低でも1兆円程度個人消費が減少する。協力金支給によってある程度の経済損失は相殺されるが、現状のままでは経済的な損失がより大きく、日本経済は1~3月期に再びマイナス成長に陥り、失業率はさらに上昇するだろう。
この程度の財政支出は、先述したアメリカのバイデン政権と比べると、極めて小規模にとどまっていると評価できる。ただ、2020年度内向けに5兆円以上の予備費が計上されており、財政政策を大規模かつ大胆に行使する余地はある。民間部門への所得補償政策を徹底することが「「コロナ対応」に失敗し、さらにはオリンピック実現も困難になる」という菅首相にとって悪夢のシナリオを避けるために必要だと筆者は考えている。
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