エア・ドゥ初号機、「地球を1079周した」その生涯 22年間の就航、「ラストフライト」に惜しむ声

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767を運航していたスカイマークはすでに全機を737に一本化し、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)でも787など最新鋭機への移行が進む。JAL、ANA以外で767を飛ばしている国内の航空会社はエア・ドゥを残すのみだ。

767で計器類は画面表示に変わった(記者撮影)

今回退役する機材を部品再利用会社のあるアメリカまで運ぶのは、エア・ドゥ運航本部の大村大機長だ。スカイマーク3期生として767を操縦し、その後、複数のLCC(格安航空会社)でA320の操縦を担当。さらに、エア・ドゥに移籍し、再び767の操縦桿を握った。

「767はセスナ機のような小型機と似た感覚で飛ばすことができる。積乱雲をよけるとき、A320はパワーがないので横から回り込んでいくが、767はパワフルに上昇してよける。小型機のようなマニュアル感もあって手応えが違う」と大村機長は話す。

767は操縦しがいがある

近年のハイテク機は、自動化が圧倒的に進み、人間を介さない部分を増やして事故を防ぐ設計思想になっている。だが、自動化が進みすぎると、トラブルがあったとき、何が起きているのかパイロットがわからなくなりかねない。

大村機長は「それを踏まえて新しい訓練方法も導入されつつあるが、767のようにどこまでもパイロットの操縦についてくる機材は、操縦しがいもある。767がなくなっていくことは寂しいが、それも時代の流れ。新しいテクノロジーを備えた飛行機には乗りたいとは思うが、767を操縦することが楽しいのは事実だ」と話す。

CAの初代制服はサロペットだった(記者撮影)

大村機長は小型機の教官を務めていた1998年、アメリカの空港で今回退役する98ADを目撃していた。「当時、サンバーナーディーノ空港で、側面に北海道と書かれていた飛行機を見た。それがエア・ドゥに納品される前の98ADだった。それをまたアメリカに送るのだから、不思議な感覚」(同)。今回、東京からアメリカの目的地に至る途中、ルートを少し変更して22年前に98ADを目撃したサンバーナーディーノ空港の上空を飛ぶことにしたという。

その98ADは1月26日に羽田を発ち、1月27日(現地時間)にアメリカ・ニューメキシコ州のロズウェル空港に到着。その後、北海道の夢を運び続けた22年間の”生涯”を閉じることになる。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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