三菱自"復活"の象徴、岡崎工場で新たな挑戦 閉鎖の危機を乗り越え、今やフル生産に

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こうした中で、三菱自動車は岡崎工場の車体組み立てラインの刷新に着手した。その狙いの一つは、アウトランダーPHEVの組み立てを岡崎工場のメインのラインですべて行えるようにすることだ。これまで電池パックなどの電動部品の組み付けは、別に設けられた専用のラインで行われており、効率が悪かった。

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組み立てラインを車が横向きに流れていく

もちろん、それだけではない。生産量の増減にも柔軟に対応できるようにした。その核となるのが「畳コンベア」と呼ばれる台車だ。

従来の車を天井からつり下げる方式から、台車に乗せて移動させる方式に変更。また、車体を縦ではなく横に並べて流すことで組み立てラインが短くなり、作業員が効率よく動けるようになった。畳コンベアは床置きなので配置変更が容易になり、増産や減産を従来より迅速にできるという。

総投資額は45億円

組み立て作業者の負荷低減やミス防止のための仕組みも取り入れられている。これまではラインのすぐそばにある棚から1台1台に割り振られた指示書をもとに、部品を選んで組み付けていた。この状態では部品を取りに行って探す手間がかかるうえ、誤品や欠品などのミスにつながりやすい。

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岡崎工場のある名古屋製作所

そこで、別の場所で1台1台に必要な部品を1つの台車にとりまとめ、無人搬送車がラインのそばまで運ぶ形を採用。これは、多品種少量で部品が多岐にわたるトラック生産などでも用いられる方式で、「キット化」などと呼ばれる。

すべてのラインの刷新工事は来年の5月で完了する予定だ。総投資額は45億円で、工場全体で3割のコスト削減を目指す。生産能力は1割増の23万台となる。一連の取り組みは海外工場へも展開させる方針。「国内でモノづくりの競争力を鍛え、今後台数が増えていく海外にも技術やノウハウを移していく」(安藤氏)。

もう一つの主力工場である水島製作所が、日産自動車と共同企画する軽自動車の生産に主軸を移す中、グローバルの視点でマザー機能を持つのはこの岡崎工場だ。閉鎖寸前からアウトランダーの成長とともに復活の道のりを歩んできた工場が、三菱自動車の屋台骨を支えている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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