中国のゲーム会社CEOが「毒殺」驚きの事件内情 SF超大作「三体」を巡る確執と謎の遺産相続者

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財新記者が複数の遊族網絡の社員から得た情報によれば、許容疑者が債務や人間関係によって林奇氏に恨みを抱いていたという事実はない。

また、複数の情報源から得た情報では今回林奇氏以外に中毒症状を起こした2人の関係者のうち、1人は遊族網絡の社員で、残る1人は北京三体宇宙公司の副総裁である趙驥龍(ジャオ・ジーロン)氏である。

数回の検査が行われた後、趙驥龍氏には慢性中毒の症状がみられ、体内の水銀の量は基準値の約10倍になっていたという。治療を受けたのち、近々退院することができるとのことだ。

遊族網絡に詳しいある人物によれば、許容疑者と趙驥龍氏は長らく折り合いが悪く、仕事においてはライバル関係にあったとのことで、許容疑者が趙驥龍氏に意図的に毒を飲ませたと疑う余地はある。

許容疑者と林奇氏はどちらも1981年生まれである。許容疑者は2003年に西南政法大学法律学科を卒業した後、フランスとアメリカに留学し、2006年にフランスのポール・セザンヌ大学保険法学院を卒業している。

プロフェッショナルで控えめな印象

彼は過去、復星集団(中国の大手コングロマリット)にて10年にわたって法務業務に従事していたが、上司の個人的な問題などを告発したことなどが原因で復星集団を離職した後に、2017年に推薦を受けて遊族網絡で働き始めた。同僚からは「プロフェッショナル、控えめ、寡黙」という印象を持たれていた。

2017年、林奇氏が「三体」の著作権問題について悩みを抱えていた折、許容疑者は復星集団幹部の推薦を受けて遊族網絡の首席リスク管理者の任に就き、会社の法務および政府関連事務を管掌することとなった。

許容疑者は約3年の期間を費やして「三体」の著作権問題を処理した後、2018年に三体宇宙のCEOとなり、「三体」IPの孵化と開発の任に就いた。しかしこのとき、林奇氏は「許容疑者は法律問題には強いが、『三体』の製作業務を引き継ぐのに適しているのかわからない」と感じていた。そのため、関連する多くの業務を三体宇宙の副総裁である趙驥龍氏に託したのだ。

2020年9月1日、ネットフリックスが「三体」のテレビドラマを製作するという情報を発表すると、ネットではたちまち話題となった。林奇氏と三体宇宙副総裁・趙驥龍氏はプロデューサーとして、英語版ドラマのクレジットタイトルに名を連ねたが、そこに三体宇宙のCEOだった許容疑者の名前はなかった。

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