40代の2人が「交際ゼロ日婚」をした驚きの顛末 ルームシェアするつもりが、まさかの展開に…

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両親への「あいさつ」が終わった後に、2人で結婚を前提に話し合うことになってしまった。枝里子さんは年齢もあって子どもは望めないことなどを圭太さんに説明。すべての項目に関して圭太さんは「問題ない」との回答。枝里子さんは自ら外堀を埋める結果となった。

「断る理由がなくなったのです。生理的に無理な相手ならばそもそも一緒に住もうとは思わなかったし、助け合えるパートナーがいたらいいに決まっている。そう考え直すことにしました」

人好きの圭太さんは25歳ぐらいから結婚願望があり、合コンの幹事などを積極的に引き受けていた。しかし、典型的な「いい人」キャラなので自分の恋愛にはほとんどつながらなかったようだ。

2016年の夏。枝里子さんと圭太さんは結婚式を挙げた。交際ゼロ日婚を報告したボランティア仲間たちから「何が起きたのかわからない」との率直な感想をもらったらしい。実際のところ、2人も「同僚レベル」から徐々にお互いを理解して愛情を深めていったのだ。枝里子さんは同じ業界であることのメリットを指摘する。

「最初の結婚相手は安定した業界の人でした。同じ会社の女性社員は残業なしでいいお給料をもらっていたようです。私たちが働くIT業界は切羽詰まった状況だと猛烈に忙しくなります。それをわかってはもらえませんでした」

ネットワークエンジニアであり、しかも自分と同じくフリーランスの圭太さんには働き方の説明は必要ない。それに加え、家族になる際のさまざまな課題に対して「何事も話し合って冷静に解決する」姿勢は、ボランティア活動のときと変わらない。

「どちらかが一方的に決めたりするのではありません。課題に対する解決策をA、B、Cと並べて一緒に検討して合意する形です。それがすごく楽ですね」

一緒に暮らし始めるとお互いの意外な一面が見えてくる

意外な喜びもある。一緒に生活を始めて、枝里子さんは圭太さんが食べることが大好きな人なのだと初めて知った。枝里子さんは時間があればレンコンの煮物など「地味な和食」を作るほうだ。圭太さんはそれがとてもうれしい。

「料理を作れたんですね!と感動してくれています。私、料理をしない人だと思われていたようです……」

2人とも旅行好きだが、車の運転が得意な圭太さんは遠方へのドライブや温泉を楽しむタイプ。枝里子さんは助手席に座ってさまざまな温泉地を巡ることに新鮮さを感じている。

「私は運転できないですが、街歩きは得意です。小さな路地にあるいいお店を探して、躊躇なく入れる自信があります。圭太さんとは視点が違うのでそれを楽しんでいるところです」

読書好きという共通点もあり、週1回だけ開店するブックカフェを2人で営んでいた時期もある。性格や特技は異なるが、同じ方向を見ている夫婦なのだ。

一緒に住もうと思える相手ならば助け合えるパートナーにもなれる――。枝里子さんの感想は結婚へのハードルを下げるヒントになりうると思う。助け合って暮らしているうちに恋愛感情が芽生える局面もあるだろう。小さく始めて大きく育てる結婚生活もいいものかもしれない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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