「東日本大震災に、私と父の入院が重なったんです。両親は地元の神戸に住んでいて、母は膝が悪いので父の看病をやりきれません。私も自分が倒れるなんて思ってもいませんでした。これはアカンな、と関西に戻ることにしました」
2年間は実家で両親と一緒に住みながら看病と仕事を両立させていた枝里子さん。父親が回復したこともあり、実家近くで一人暮らしを再開することにした。
「長いこと東京にいたので関西に友だちがいませんでした。助け合える人間関係が欲しい。そう思って、東京の友だちに大阪での同業者飲み会を紹介してもらいました」
その飲み会での縁から、神戸を中心とするIT系のボランティア活動の団体に誘われた。会計係をしていたのが圭太さんだったのだ。
「イベントのときは、『お金』と書いたガムテープを体に貼って歩き回っている係です(笑)。スポンサー企業からいただいた500万円ぐらいの資金を1人で管理するので、ごまかしたりはしない人であることはわかっていました。リーダータイプではないけれど信用が置ける人です」
圭太さんの人柄を淡々と評価する枝里子さん。信用しつつも恋愛感情があったわけではない。
思わぬ誤解を受け、同居人ではなく婚約者扱いに
シェアハウス構想が持ち上がったのが2016年の春。圭太さんが会社員時代の後輩男性2人と一緒に住むことを計画。フリーランスになることを考えていた枝里子さんは「渡りに船」だと感じた。
「独立するには固定費を下げなければと思っていたからです。一部屋空いていませんか?と圭太さんに打診しました」
完全に店子モードであるが、洗濯などは4人一緒にするつもりだったと枝里子さんは明かす。圭太さんは7歳下だが、後輩男性はさらに若い20代後半。「寮母さん」のような存在として住もうと思っていたらしい。
しかし、実際には2人きりで住むことになった。後輩の1人は夜勤続きで生活パターンが合わないので不参加となり、もう1人は入居1週間後に東京転勤が決まったのだ。これではシェアハウスではなく同棲である。
「親には説明しておこうと思いました。まずはうちの実家に圭太さんを連れて行き、大家さんとして紹介。変な人ではないので安心してね、と伝えたつもりです」
今度は同じく兵庫県県内に住んでいる圭太さんの両親に2人で会いに行った。店子として紹介されるつもりだったが、なんだか様子が違う。明らかに「長男の婚約者」として扱われているのだ。
「困ったなー、と思いました。私は年上のバツイチであることすら話していません。どうするんですか?と圭太さんに聞いたら、『(結婚ということで)ダメですか?』なんて返してくるんです。そもそも付き合ってないじゃん!と思いました」
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