北海道のTVマンが記した「デス・ゾーン」の真意 開高健ノンフィクション賞・河野啓氏に聞く
登山家が「マグロになりたい」
――聞き手のわたしは登山経験も皆無、山への興味も乏しかったので、栗城さんの名前もこの本で初めて知りました。開高健ノンフィクション賞作品とオビの文章にひかれて手にとったところ、予想外にひきこまれてしまいました。
河野さんは北海道放送のディレクターとして、栗城さんがまだ広く認知されていなかった2008年に出会い、2年ちかく、取材者と被写体の関係を保たれた。出会われたきっかけからお聞きしていいですか。
私も山は素人で、会社の先輩に誘われて日高山脈の2000メートル級の山に1回登ったきり。だから当初、彼が自分のキャッチコピーにしていた「七大陸最高峰、単独無酸素登頂」(無酸素は、酸素ボンベを使わないことを指す)の意味もよく理解していなかった。ただ、言葉の響きがすごそうだなと。
会うきっかけは、出張帰りの列車で手にしたカタログ誌に彼のインタビュー記事が載っていたことから。登山家なのに「マグロになりたい」と語る言葉の面白さ。南極大陸の最高峰を制し、残るはエベレストだけという記事にそそられ、数日後には連絡をとっていました。
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