「中小企業の生産性向上」が日本を救う根本理由 日本の中小企業は「躍進の可能性」に溢れている
では、なぜ中小企業の生産性向上が、日本経済全体の生産性を押し上げる効果が最も期待されるのか。理由は大きく2つあります。
中小企業の生産性向上が日本全体を救う2つの理由
まず、日本では全企業に占める中小企業の割合が非常に大きいことが挙げられます。日本の労働者の実に68.8%が中小企業で働いているのです。
他国との比較でも、日本では突出して多くの割合の人が中小企業で働いているのがわかります。たとえばアメリカでは、中小企業で働いている人の割合は47%です。
しかも、実態はもっと多いと考えられます。日本では従業員数169人以下を中小企業と定義していますが、これは先進国の中では最も小さい水準です(日本では中小企業の従業員数による定義が業種により異なるため、本稿ではそれぞれの業界の従業員数をベースに、加重平均した数字を提示しています)。
例えば、EU27カ国は250人以下、アメリカやドイツは従業員数500人以下を中小企業としていますが、この水準を日本の企業に当てはめると、日本の中小企業に働いている人の割合はさらに高くなります。中小企業で働く人の割合はおそらく、8割弱にまで増えると推察されます
8割弱の労働者が働いている中小企業の生産性が向上しなければ、国全体の生産性もあまり向上しないのは当然でしょう。
国の生産性はあくまでも加重平均ですので、2割しかない大企業がいくら頑張っても、加重平均はそう簡単には動かないのです。
経済学では、中小企業の生産性を見る尺度として、大企業の生産性と比べた比率を使うことがあります。日本の場合、中小企業の生産性が大企業に比べて、国際水準に照らして著しく低いのが、中小企業の生産性向上が国全体の生産性向上につながるもう1つの理由です。
2018年のデータで確認していきましょう。EU28カ国全体では、中小企業の生産性は大企業の66.4%です。EU28カ国の中には生産性がかなり低い国も含まれているのでこの数字になりますが、ドイツ、イギリス、フランス、オランダ、デンマークなどEU10カ国に絞ってみると、中小企業の生産性は大企業の78.1%です。アメリカの場合、中小企業の生産性は大企業の62.9%です。
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