中国が北朝鮮向け原油を止めていない理由 技術的にも政策的もパイプラインによる輸出停止は不可能

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韓国の大韓貿易投資振興公社(KOTRA)北京貿易館(支社)は5月下旬、中国の税関統計を元に今年第1四半期(1~3月)の中国から北朝鮮への原油輸出はゼロと発表している。

ただ、「丹東市から北朝鮮に伸びるパイプラインを通る原油は、輸出ではなく支援という性格を持つため、税関統計に示されないことがある」と韓国の北朝鮮専門家は指摘する。そのため、実際には送られていても貿易統計には「ゼロ」と出ることがありうる、というのだ。

一方、中国の複数の北朝鮮問題専門家は東洋経済の質問に対し「おそらく止めているだろう」と口をそろえるが、確証を聞くことができなかった。同時に、「現在はイランなどから海上輸送で原油を輸入することが増えている」との指摘もある。中国も、パイプライン以外の輸入ルートを確保していることがうかがえる。

統計に表れない「支援」実績

中国の北朝鮮研究者は、「中朝間の仲が悪いと言っても、張成沢処刑から急に悪くなったわけではないことを知るべき」と言う。それは、1992年に中国が韓国と国交正常化をした際、北朝鮮側の意向に中国が耳を傾けなかったという遺恨が北朝鮮側に残っているため、という。

現在、北朝鮮の貿易総額のうち9割近くを中国との取引が占める。核開発問題やミサイル発射で国際的な経済制裁が強まる中、経済面では陸続きである中国との関係に頼るしかなかった。そのため、「中国との関係が深まったのはあくまでも現実的な結果。気にくわないと言っても、中国は朝鮮半島の非核化を大事に考えているのと同様に、北朝鮮の体制安定を望んでいる」(前出の研究者)というのが、本当のところのようだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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