さらに入社後の給与モデル体系も詳しく説明した。一般企業であればこうした説明は当たり前かもしれないが、社会人野球選手の場合、仕事内容や待遇は詳しく説明しないことのほうが多い。仕事ではなく野球をするために会社に入るからだ。
社会人野球の選手は現役中は、総務や庶務、経理などの簡単なデスクワークに回され、会社の本業に深く関わらないことが多い。遠征や練習などで会社にいないことが多いし、勤務時間も短い。給与や待遇についても「野球選手枠」とでもいうようなものがあった。最近は少し変わってきているが、端的に言えば申し訳程度に仕事をしてほとんど野球、というのがこれまでのパターンだった。
しかし日本晴れは、選手を会社の戦力としてみなして、好待遇を用意するとともに、がっつり仕事もしてもらおうと考えているのだ。会社にとっても「戦力」、野球部にとっても「戦力」というコンセプト。では、選手がプロのドラフトにかかったらどうするのか。
築山社長は「選手がNPBのドラフトにかかったり、海外のプロ野球に行くなど、チャレンジするなら喜んで送り出します。そこで戦力外になったらまた戻ってくることも保証したい。そういう経験をした人が増えれば増えるほど企業は強くなっていくと思います」と語る。「野球愛」が半端ではないのだ。
元ドラ1選手もトライアウトに参加
12月15日のトライアウトに集まった20人の選手のキャリアはまちまちだった。高校卒業見込みから、大学在学中、独立リーグでプレーした選手もいる。ある大学生は「今年入学したが、新型コロナでまったく野球ができなかった。これなら社会人に行ったほうが野球ができると思った」と語った。
中で1人、ずば抜けた体格の選手がいた。自己紹介で「元ソフトバンクホークス、栃木ゴールデンブレーブスの巽真悟、33歳です」と話した。巽は2008年ドラフト1位でソフトバンクに入団。2016年に戦力外となり栃木に入団。2019年から栃木でコーチを務めていた。
「指導者になると考えていますが、まだ現役を続けたい気持ちもあるので、投げさせてもらえるならやりたいと思います。私は田舎の高校で育ち、周りにいい選手がいなかったのですが、プロ入りしてから多くの先輩や指導者から技術や心がけなどをたくさん学びました。そうしたものを伝えられればと思います」
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